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中小企業の業績を上向かせる、ブランディングの力

中小企業を対象とした景況調査の結果、値上げができている会社は業績が上向き傾向にあるとのこと(大阪府中小企業家同友会調べ)。わかってはいるものの、顧客が離れてしまうのではといった怖れも含め、値上げに踏み切ることをかんたんに決断できるものではありません。
値上げは、顧客に受け入れざるを得ないなと感じさせるだけの、他社にはない優位性やブランド力を持つ企業にのみ許されるものです。それが中小企業でも持てるのか。そこが経営者すべてが憂慮するポイントでしょう。
今回のコラムは、賃上げや原料費の高騰、燃料費の上昇などによる環境の変化を乗り切るためには、自社の優位性を振り返り、ブランド力を高めなければいけないという主旨になります。うちには目立った優位性などないから・・・と感じた方でも、大丈夫です。業績を改善させ、中長期的に胸を張って事業を進められる体制を作っていきましょう。

ブランド力が価格決定権を生む

中小といえども、ブランド力がある企業は単に商品やサービスを提供するだけでなく、「この会社だから買いたい」「このブランドなら信頼できる」 という付加価値を顧客に感じさせることができます。これは、価格決定権を企業側が握ることにつながり、値上げをしても顧客が納得しやすくなる要因となります。

では、中小企業がブランド力を高め、「値上げしても選ばれる企業」になるためには、どのような取り組みを行うべきでしょうか?

 

1. 自社の強みを明確に

ブランディングの第一歩は、「自社の強みは何か?」を明確にすること。例えば、以下のような視点で考えてみましょう。

  • 技術力・専門性:他社にはない独自の技術やノウハウ
  • 品質・こだわり:素材や製造工程での工夫
  • 顧客対応:御社が顧客に提供している価値
  • 評価:顧客が他社ではなく、御社から購入している理由
  • ストーリー性:創業の背景や理念、社長・社員の想い

「うちは〇〇だから選ばれている」と言えるポイント。それがブランドの核となります。

 

2. 価格競争からの脱却:付加価値の提供

値上げが難しいのは、「価格以外の差別化ポイントが伝わっていない」からかもしれません。単なる機能やスペックではなく、「顧客にとってのメリット」 を強く打ち出すことで、価格以上の価値を感じてもらえる可能性があります。

例えば、以下のような付加価値を提供できるか検討しましょう。

  • 長期保証やアフターサービスの充実
  • 特定の業界・顧客に特化した専門性の高さ
  • 環境に配慮したエコな製品やSDGsへの取り組み
  • 地域密着型のサポートや関係性の深さ

価格だけでなく、「この会社だからお願いしたい」と感じさせる付加価値を持つことで、値上げを受け入れてもらいやすくなります。

 

3. 一貫性のあるブランドイメージに

ブランドは、一貫したメッセージとビジュアルによって形成されます。マーケティングやブランディングにおいて、最も注意しなければいけないのがこの一貫性です。もし、社内のあちこちで一貫性のないコミュニケーションが社外とやりとりされれば、それだけで発しているメッセージとのさが目につき、信頼は薄らいでしまいます。
一貫性の維持を担うのは経営者。常に社内に対して、ブランドメッセージを伝え、啓蒙していくことが必須条件です。
具体的には、企業ロゴ、Webサイト、SNS、パンフレット、メール対応から発せられるメッセージのすべてが統一されたブランドイメージを持つことです。

  • 視覚的統一:ロゴ、カラー、フォント、デザインの統一
  • メッセージの統一:「何を大切にしている会社か?」が一目で伝わる発信
  • トーン&マナーの統一:顧客対応の言葉遣いや雰囲気の一貫性
  • 社員から発するメッセージ、サービスでの一貫性

「なんとなく安定感がある」「なんとなく安心できる」と思われる企業は、ブランド力がある企業。この「なんとなく」を意図的に作り出すことが重要なのです。

 

4. 顧客との信頼関係を強化する

ブランド力の本質は、顧客との信頼関係にあります。顧客の声に耳を傾け、誠実な対応を続けることで、自然とファンが増え、口コミやリピート購入につながります。

  • 購入後のフォローを徹底する(アフターフォローの連絡やサポート)
  • 顧客の声を活かす(レビューを収集し、改善に活用)
  • リピーターを大切にする(特典やイベントで関係を強化)

「この会社の商品なら間違いない」と思われるようになれば、多少の値上げがあっても顧客は離れません。

 

5. 専門性の高さを訴求する

ブランドの信頼性を確立するために、高い専門性があることは競合他社との差別化ポイントとして重要な要素です。

専門知識や業界の最新情報を発信することによって、顧客候補に「この分野のプロフェッショナル」と認識されやすくなります。

方法は業界によって異なりますが、専門コラムやセミナー、SNSなどを使った情報提供を継続すると、少しずつ注目されるようになります。たとえば加工業、メーカーなどであれば、保有する工作機械の紹介は技術者同士の共通言語であり、その会社にどの程度のレベルがあるかよくわかる指標にもなるでしょう。

ペルソナを設定し、理想的な顧客の分析を行う

ブランディングの成功は、適切なターゲットに向けた訴求が不可欠になります。そのために重要なのが「ペルソナ設定」と「ターゲット分析」。ペルソナとは、理想的な(今まで取引しているなかで、多数を占めるモデルでも可)顧客像を具体的に描いた架空の人物モデルのことで、年齢、性別、職業、ライフスタイル、価値観(自社の事業領域に関する)などを詳細に設定します。

あえてペルソナという「個」に絞り込み、明確にすることで、顧客層のニーズや課題を深く理解し、それに沿ったマーケティング戦略を立てることができるようになります。例えば、ターゲットが忙しいビジネスパーソンであれば、自社製品やサービスを短時間で理解できるコンテンツになど、効果的なアプローチにつながります。

また、ターゲット分析を行うことによって、どの市場に強いニーズがあるのか、どのチャンネルを活用すればリーチしやすいのかも把握できます。SNSの使用傾向や購買行動データを分析し、ターゲットに合わせたメッセージを届けることで、ブランドの認知度と信頼度が向上します。

ペルソナ設定とターゲット分析を適切に行うことで、より効果的なブランディングが可能となり、競争の激しい市場でも差別化されたポジションを築くことができるのです。

ブランド力が中小企業の未来を左右する

値上げを成功させるためには、単に価格を上げるのではなく、顧客に納得感を持たせるブランド力を磨くことが不可欠。これまでお伝えしてきたことをもういちどまとめておきます。

  • 自社の強みを明確にし、付加価値を提供する
  • 一貫性のあるブランドイメージを作る
  • 顧客との信頼関係を深める

このブランディング、大企業ほど実施は容易ではありません。なぜなら、組織が大きい分社内に浸透させるのに時間と手間がかかるから。ただ、現状を考えると値上げに踏み切れているのは、ほとんどが大企業です。彼らはブランディングを意識している、いないに関わらず、これまでに蓄積してきた資産(=顧客からの信頼)があるので値上げができています。

こんどは中小企業でも価格転嫁を含めた値上げを実施するために、価格競争に巻き込まれない戦略に切り替えるために、自社の優位点を振り返ることからはじめる。ブランディングは長期的な投資です。すぐに売上が向上するわけではありませんが、中長期的な視点、つまり自社を継続させようと考えた場合に非常に重要な取り組みになります。少し取り組んで効果が現れないからといって、やめてしまったり、路線を変更してしまったりすることは厳禁です。つねに訴求に一貫性を保ちながら、少しずつ大きな負担にならないような取り組みを積み上げていくイメージを心がけてください。

優位点の見つけ方、ブランディングの進め方については、社内だけで進めるのは自社を知りすぎているために、難しいことがあります。あえて業界に詳しくない外部の目を入れることが課題解決の近道になりますので、お気軽にご相談いただければ、アドバイスをさしあげます。

ブランディングについて

ファン育成マーケティングのための、確かな8つの手段

ファン育成マーケティングのための、確かな8つの手段

商品スペックを訴求するだけでは、もうモノは売れない。よほどの独占的な価値をもつ商品以外、ほぼ全ての業界において当てはまることだろう。

店頭で、またはネット上にひしめくオンラインショップの中で、顧客に「これでなきゃダメなのよ」と手を伸ばしてもらうために必要なもの。そして、1回きりでなく何回も購入してもらうために必要なもの。それはパッション、思い込み、強い愛情といった、ファン心理である。

今回はWebコンテンツを作るうえで、あなたの商品・ブランドのファンを育てるために必要な8つの取り組みをご紹介しよう。

ファン作りのために必要なこと

1.まず、社内にファンをつくる(インナーブランディング)

社内にファンをつくる(インナーブランディング)

ブランドのファンづくりを行うため、最初にはじめるべきことは何か?まず社内にできるだけ多くのファンを育てることから始めよう。なぜなら、あなたの大切なブランドを売ったり、顧客対応をしているのは、他ならぬ社内のスタッフなのだから。

インナーブランディングという言葉を聞いたことがあるだろうか?リッツカールトンホテルやスターバックスの事例が有名だが、スタッフ一人ひとりの心のなかにブランド価値が確立されており、まるでスタッフ自身がブランドそのものであるように行動できるよう育成すること。その啓蒙活動を意味する。

インナーブランディングには、顧客満足度の向上を生み出すほかにも、仕事のやりがいや離職率の低下など、さまざまな効果があると言われている。

とにかく、社内でファンが生まれるほど心強いことはない。あなたのパッション、ブランド価値やその将来性について、スタッフとの共感を育てることは重要課題である。

2.メッセージはシンプルに。魔法の言葉を作れるか

メッセージはシンプルに

社内ファンにも、もちろん社外にもブランド価値を伝えるために必要なのは、言いたいことをギュッと一つに凝縮することだ。

たとえば、スターバックスのコンセプトは「Third Place(家庭でもなく職場でもない第三の空間)」。スターバックスが売っているのは、コーヒーでも、新作のフラペチーノでもなく、あなたが寛げる第三の空間。しかも、ここには家庭や職場では味わえない、特別な雰囲気と特別な気分が得られる。だから、人が集まってくる。

とはいえ、スターバックスほどの強力でシンプルなメッセージをつくり出すことは簡単ではないだろう。しかし、自社の商品の良いところを並べるだけでは、なかなか伝わりにくいことは事実。商品スペックではなく、顧客にどのようなベネフィットを提供することができるかを考えてみることから初めてはいかがだろうか。

3.思いを伝えるために:裏方を見せる、生の声を聞かせる

裏方を見せる、生の声を聞かせる

人を感動させるためには「人の思い」が必要である。商品やサービスといった完成品ではなく、そこに至るストーリーがあってこそ、私たちは心動かされる。背景があってこそ商品スペックの価値が理解できる。

「そんな、わざわざ語るほどのことでは・・・」と日本人は謙遜することが多いが、自分たちの思いは言葉に表さなくては伝わらない。というよりも、言葉に出したとしてもそれが伝わるのは何十分の一くらいのものだ。それなら伝えない手はないだろう。あなたのメッセージに共感してくれる人はきっといる。

4.大切なことは何回も伝えよう

大切なことは何回も伝えよう

ファンは一日にしてならず。社内・社外にかかわらず、大切なことは毎日でも伝えなければ伝わらない。他人は、自分が思っているほど話を聞いていないものだ。だから、企業には行動指針やクレドといったものが存在する。社内であれば、社員の目に触れるところに共有したいメッセージを掲げよう。朝礼で何回でもそれについて、さまざまな方向から、さまざまなエピソードを交えて語ろう。

社外であれば、ロゴマーク、ブランドメッセージはもちろん、すべてのサービスにおいて顧客がメッセージを感じ取れるように工夫することだろう。

スターバックスでは、商品以外にも、照明の明るさやBGMの音量、椅子の座り心地、従業員の口調など、きっとすべてにおいて「第三の空間」に通じる取り組みがなされているはずだ。

5.惜しみないサービス精神を。ノウハウはどんどん提供する

ノウハウはどんどん提供する

いまコンテンツマーケティングという手法が注目されている。「当社の商品はこんなに素敵ですよ」と一方的に訴える、従来のプッシュ型の広告ではなく、まったく逆のユーザー視点に立って情報を提供し、そこから商品やブランドへの理解を促す方法だ。

具体的にいえば、ネットで何か調べ物をする人に対して「あなたが知りたいのはこれじゃないですか?」と専門的な情報提供を行うことで、信頼関係を少しずつ築いていく。

そこで、大切なことはユーザーに信頼される情報を提供できるかどうか、ということ。そのためには、出し惜しみをしてはいけない。

自社が築いてきたノウハウを紹介すると競合他社にも見られてしまうのでは?もしくは、情報を出し過ぎると逆に問い合わせしてもらえないのでは?そう思われる方が多いだろうが、特別な企業秘密以外はどんどん出すべきである。それによって得られるメリットの方が多いのだ。

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6.伝える相手を特定して、メッセージは具体的に

メッセージは具体的に

そこで気をつけたいのは、せっかくの専門知識を提供しても、相手に分かりにくいようでは意味がない。

専門的な内容になればなるほど、気をつけなくてはならない。スペシャリストのあなたにとっては当たり前のことでも、素人のユーザーには分からないことも多い。プロであればあるほど、ユーザーは何が分からないかを判断するのは難しくなっていく。

そんなときは、伝える相手を一人に限定してみる。しかもできるだけ具体的に。
たとえば、あなたが高齢者むけ携帯電話の開発者だとして、商品販促のために何か書いてくれと広報担当から頼まれた。何を誰に伝えるか?開発者から発信する専門情報はさまざまだろうが、先に相手が決まらないと書くべき内容は異なってくる。

相手は、携帯電話の販売会社スタッフ?それとも、実際のユーザーである高齢者?高齢者は年齢によってはネットは使わない人もいる。それなら、実際の決定権をもっている子ども世代?ターゲットを絞ることで、書く内容はもちろん、ストーリー構成、言葉使いが見えてくるはずだ。

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7.コスト効率を忘れることも必要だ

コスト効率を忘れることも必要

ファンづくりの取り組みは、ある意味、非常に非効率なものだと思う。パッションを何度も何度も語り、顧客が必要とする情報やサービスを何度でも提供し、それでも時にはまったく伝わらない場合だってある。

しかし、ファンを作るということは決して短期的な仕事ではない。メッセージは半永久的に発信していくべきものだし、それでこそ顧客の方も長期的につき合ってくれるだろう。

この非常に大切な仕事に対して、短期的にコスト意識や効率のことを問うのはやめよう。

8.ファンがファンを生む仕組みづくり。ソーシャルメディアなど

ファンがファンを生む仕組みづくり

やがて努力が報われファンが育ってくると、マジックが起こり始める。ファンが人を呼ぶのだ。分かりやすい例でいえば、FacebookやはてなBookmarkなどのSNS効果。誰かが「この記事おもしろい」とシェアしてくれると、そこを伝って何十人という人たちを呼んでくれる場合もある。

ファンというものはありがたい存在で、ファンが発したひと言は、企業側が伝える100の言葉よりも偉大な力をもっている。

そういった嬉しい効果を生み出すためには、ある程度の仕掛けも必要だ。ファン同士の情報共有がしやすいとか、「好き!」という気持ちを共有できる仕組みなど。オンラインショップでよく見かけるお客さまの声や人気ランキング、オフ会、ブログ記事のSNSボタン設置などなど。大掛かりでなくてよいので、ファンの気持ちを理解し、何かお膳立てしてあげる機会をつくることも必要だ。