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採用サイトで就活生に居場所があることを伝えてあげよう

「このごろは、説明会を開いても参加者が集まらなくて・・・」

もはや恒例のように、相談を持ちかけてくる中堅メーカーのS君、また浮かない顔です。
経営企画の立場から自社サイトのディレクションにもかかわり、採用担当として母集団形成も任される大変さはよくわかります。

S君自身は、採用コンテンツを大幅に再編したいようですが、「コストをかけたぶんだけ、学生は集まるのか」と経営陣に詰め寄られ、稟議もかんたんには通らない。
先日から、就活にのぞむ学生の変化について、企業側の受け止め方を調べていた私は、その内容も参考にして、お助けプランを練ってあげることにしました。

就活生は積極性が足りない!?

私が注目したのは、2025年卒の採用マーケット分析の中で見つけた、こんな結果でした。

キャリタス就活「2025年卒 採用ホームページに関する調査」(PDF)

・就業意識の低い学生が増えた        35.7%
・企業理解不足の学生が増えた        42.5%
・仕事内容について理解不足の学生が増えた  40.7%

1000社以上を対象とした調査で、「そう思う」と回答した企業の割合になります。

「そう思わない」としているのは、いずれも全体の1/3以下です。
採用する側から見たとき、志願者の姿勢に一定の物足りなさを感じている様子がうかがえますね。
少なくとも、みんなが猪突猛進型で激しく競っている雰囲気ではないのでしょう。

就活にのぞむ段階になっても、まだ「自分探し」をしているような、本気モード未満の学生がたくさんいると考えざるを得ない。

「それならこのプランはどうかな。まだ採用ページに載せている会社は少ないと思うけれど」

「たとえば、5つの選択肢があるテーマを3つ設けて、それぞれもっとも自分に適合するものを選んでもらうようにする。ちょっとした自己診断コーナー的な感じだね」

サイトをおとずれた就活生が「もしここに入社するなら居場所はどの部署なのかな」と、思わず想像してしまうようなアイデアをS君に提案したのです。

就活生をその気にさせるひと工夫

実際に導入するなら会社の採用コンセプトを反映させますが、ここはあくまでサンプルなので、仮のチェック項目を並べ、狙いや効果を書いてみます。

Q1.【会社に求める価値観】
A 人や組織を動かしたい。裁量権を活かせるポジションにつきたい。
B 個人のスキル・専門性を極めたい。自分が納得する仕事をしたい。 
C 社会貢献度の高い事業や人に喜ばれる仕事に興味がある。
D ワークライフバランスを大事にしたい。仕事と家庭の両立は当然。
E 新規案件へのチャレンジが推奨される風土。発想の自由度が高い環境。

Q2.【人間性・キャラクター】
A 行動力旺盛で責任感が強い。リーダーシップがある。
B 落ち着きがある。一人でも粘り強く努力できる。
C アイデアが豊富。創造性があり洗練された感性を持つ。
D ポジティブ思考で話すより聞き上手。思いやりがある。
E サポート役にやりがいを感じる。ワンチームに憧れる。

Q3.【仕事に活かせそうな適性】
A やるべきことが重なっても段取りよく進められる。
B 初対面でも遠慮せずに話すことができる。
C 自分の考えを論理的に伝えることができる。
D 違う意見を持つ相手でも柔軟に話し合える。
E 成果が数字に表われる仕事に魅力を感じる。

回答の組み合わせは全部で125通りになります。
次にその回答から導かれる結果として、各事業部や業務内容のコンテンツを紹介するのです。

「BーCーA の方は製造部の記事へ」「EーAーE の方は営業部へGO!」
「DーDーB の方は総務部の記事へ」 といった具合。

とくに珍しい回答パターンに対しては、あえて定番部門への誘導をせずに、「あなたのロジックをぜひ面接で伺いたい」としたり。

テーマや選択肢の表現は、各事業部のビジョンや求める人物像などによって、いくらでも作り込むことが可能です。ただ、項目が多すぎると読み手がウンザリしたり、結果の処理も大変になります。意図するのは、適性診断の精度を上げることではないので、質・量とも適度な構成を考えたいですね。

「これは楽しいですね。ボクもやってみよう!」興味津々のS君。
「なにか、自分をあらためて見直すきっかけになりますよね、これ」

そう、そんな風に感じてもらえたら、コンテンツの「つかみ」としての効果はアリだと思うんです。

参加型のトピックがアクセントになる

ともすれば、「知ってほしい」「伝えたい」内容ばかりが目立つ採用サイト。

「あなたはどんな人なのかな。少し教えてくれる?」と、採用する側から促す展開を加えることで、期待できる効果があります。

 

就活を「自分ごと」として考えるきっかけに

冒頭で、自分軸がはっきりしないままの就活生が、4割近くいるという結果にふれました。採用サイトも、ざっくりと流し読みから始める姿も想像できます。似たような企業サイトが並ぶなか、ふと自分のキャラや適性を問われるトピックに出合ったらどうでしょう。

「おっ、セルフチェックってやつか。ひとつやってみるか」と、これまでにない反応が起きるかも知れません。

適性診断はネットでもたくさん見かけますが、おすすめの職種や業界を伝えるのがメインで、各企業の事業内容とはつながりません。さらに結果を確認するには相応の時間もかかります。

だから、エッセンスだけ拝借すれば良いのです。

「面接の準備段階として企業サイトを訪れてみたら、適性・適職についての認識も刺激され、個性を活かした部門で働く状況までイメージできた!」

就活生が、採用サイトでちょっと前のめりになってくれる。
ユニークな仕掛けだと思いませんか。

 

自分で選ぶから確信を求めたくなる

限られた選択肢から最適なものを選ぶだけといっても、テーマが会社との関係性や働き方なら、学生は真剣に取り組みますよね。そして、決断ができれば、次はそれが正しかったのか検証したくなる。

判断の根拠や確証を得ようとする人間の行動パターンは、ご存知の方も多いでしょう。
心理学を取り入れたマーケティングの分野でも、よく扱われるお馴染みの題材ですね。

「自分は営業部では?と診断されたけど、職場の現状はどんな感じかな」と、彼らが興味を持ちはじめるのは自然な流れ。

就活生が本気でコンテンツを精読し、情報を把握してくれることは、採用を検討する側にはとてもありがたいこと。ひとつのページを仕込むだけで、面談の前哨戦のような空気が生まれ、採用サイトの先にある会社との距離が近くなったらベストですね。

また、この自己診断は、説明会や面接などリアルな対話の場面でも効果が期待できます。

「君はBーCーAのパターンなんだね。でも希望は営業なのか。そのあたりはどうして?」
「はい、製品の知識は深めたいのですが、それを世の中に広めたいという思いの方が強くて」

お互いに共有する話のネタがあれば、アイスブレイクの役割になったり、就活生の根っこを知るきっかけにもなるはず。

「これならコンテンツにメリハリがついていいですね。さっそく提案してみようかな」
少し気持ちが上向いた様子のS君でしたが、最後に大切な念押しを添えてあげました。

メインを磨いてこそ活きる「つかみ」

今回ご紹介した「つかみ」は、コース料理でいえば前菜にあたります。
次への期待を膨らませるステップであって、大切なのはあくまでメイン。

事業紹介や現場の様子を伝える写真、先輩インタビューやキャリアパスについてのリポートなど、後に続く本題が充実していなければ意味がありません。

まずはメインコンテンツをしっかりと仕上げておくこと。そこは、見失うことのないように。

納得した様子のS君。

みなさんは、いかがでしょうか。

「たしかに、採用サイトはどこもパターン化されている印象がある」
「おっ!と感じてもらうには、どんな工夫がいるんだろう」

このコラムでそんなことを感じた方は、ぜひ当社にお問い合わせください。
ヒントをお伝えできる自信がありますよ。

採用サイトのコンテンツで、変化する若者の志向をつかむ

就活生Aさん「息子が大手志望と言い張って、困ってるんだよ。良いことばかりじゃないと思うんだが」
Bさん「ウチの娘はまだ数人で始めたばかりのスタートアップ企業に参加を決めちゃって」

30年ぶりの同窓会に参加したら、こんな声が聞こえてきました。

Aさんの息子君は関西私学の雄D大、Bさんの娘さんは日本の最難関T大。円満な独り立ちを願う親たちが、そんな話題で盛り上がりました。

帰り道、就活生のゴールは色々なんだなと感じながら、ふと、先日のコラムに登場した採用担当S君のつぶやきを思い出しました。

「志望者が集まらないんですよ。みんな大手に流れるんでしょうね。中小には厳しい状況です・・・」

同窓会で聞いた若者たちの変化、具体的にどんな様子なのでしょうか。

就活世代は会社に何を求める?

社会人デビューに向き合う若年層を対象にした調査では、私たちが経験した就活とは、違った傾向が見えてきます。複数のアンケート結果をひもといて、志向の変化を顕著に感じる項目を抽出し、まとめてみました。

①勤務地 配属・部署 仕事内容 裁量権
②ワークライフバランス 福利厚生 勤務形態
③キャリアパス 成長支援 社風

①については、希望の勤務地が叶うこと、転勤はない(少ない)、入社前に配属先や部署が知りたいなどの希望が見られます。とくに仕事内容は「自分のやりたい職種につけるか」が最大の関心事で、自己実現へのステップという意味でも、働き方の軸としているようです。ルーティンワークに対しても抵抗があり、社歴が浅くても裁量権を得たいという結果も。

②で見られる要望は、「プライベートの時間が確保されていて、残業が少ない」こと。若年層に定着している「タイパ(タイムパフォーマンス)」の概念は、会社を選ぶ際の必須条件。フルフレックス、出社とリモートを組み合わせたハイブリッドワークなど、多様な勤務形態が支持されるのも、そこにつながっています。

③で特徴的なのは、「昇進を(必ずしも)望まない」という意見。就活者の30%近くを占める調査結果もあります。その理由の多くが、重い責任を嫌い、プライベートの時間を確保したいから。また、おもしろいのは「パラレルキャリア」というキーワード。終身雇用や年功序列といった旧来型の組織で勤務を終えるのではなく、副業、転職も含めて経験やスキルをひろげる生き方を一定数の就活生が思い描いているのだとか。忠誠心をもって会社に一生を捧げるなど、遠い昔の話です。

みなさんの印象はいかがでしょう。

「高望みせず堅実で、自分軸がしっかりしている」。
就職活動の中心にいるのはZ世代ですから、メディアなどで流れるイメージと被った方もおられるでしょうか。

もちろん、給与と待遇、知名度や事業規模といった項目は、以前と変わらずニーズがあります。
でも、明らかに上位独占ではありません。給与だけに限定すれば、重要度が下位になっているアンケートも見られたくらいです。

むしろ目に付くのは福利厚生や休日・休暇、仕事内容、社会貢献度や業界における将来性など。企業の個性とライフプランをリンクさせて、接点を見つけようとする姿勢です。

「どんなメンバーと、どういう環境で、どんな仕事を担うか」

表面的に提示される会社のスペックよりも、人生をよりよく生きるための確信を得たい。
それが、就職活動に取り組む彼らの本音なのでしょう。

(参考)
Z世代の仕事に関する意識調査 | 株式会社SHIBUYA109エンタテイメントのプレスリリース

少子化による採用難で大手の一人勝ち?

新宿野村ビル母集団の形成に苦労している。

企業側からよく聞かれる嘆きです。「志願者の質より量を重視する」と、昨今は大手でさえ採用枠をなんとか埋めようとする動きが伝えられています。くわえて景気の先行きに不安を感じている就活生も40%を超えることから彼らが大手に流れている傾向も。中小企業の多くがあきらめモードなのもよくわかります。

ですが、「どうせ大手狙いなんでしょ」と、決めつけてしまうのはちょっと待った、です。

大手のスペックには及ばなくても、多様化する若者の志向に応えられる強み、明確なビジョンがあれば、採用の打ち手は確実にあります。大手一辺倒ではなくなり、独自のワークライフバランスを願う若者が増えているのですから。中小にとっては、多彩な人材獲得に向けた発想の転換期なのです。

要は彼らが求める要素と、自社の魅力・強みのマッチングを徹底して追究すること。
自分が求めるものがここにあると、会社とのつながりに特別な価値を見つけて貰うのです。

採用サイト(企業サイト)で活路を見出す

「人が集まらない…」。S君のつぶやき。

ここまで調べてきて、いつものおせっかいモードに入りました。

変化しつつある就活生の志向をしっかり把握すること。
採用サイトを活用すれば志願者を増やすきっかけになるかも、と。

仮に、S君の会社にこんな個性があるなら、構成しだいでエントリー増加が期待できそうです。

・コンパクトな組織・部署を利点として、柔軟な戦略の立案・修正が可能。意思決定も迅速。
・上司と部下の距離が近く、社内の人間関係も親密で風通しが良い。独自の意見も出しやすい。
・1対1の顧客対応があり、信頼関係が築ける。「貴方から買いたい」といった声をもらう。
・認知度にかかわらず、唯一無二の技術がある。大手が一目置くノウハウを持っている。
・知名度は低くても、業界で一定の存在感を維持し、事業を継続してきた長い歴史がある。
・少数精鋭で各個人が重要な役割を担い、評価も明確で、達成感や貢献度を感じやすい。
・ライフプランに影響する転勤はなく、休日や残業もバランス良く運用の透明性も高い。
・研修やスキルアップの計画が実行されており、キャリアパスも会社と相談しながら進められる。

すべてを備えるのは難しいかも知れませんが、大手でなければムリな条件でもないはずです。

私が知るなかで、これらをうまくコンテンツに反映している企業がありますので、紹介しておきます。

採用トップ | 化学品の専門商社、島田商会の採用情報

就活生の心を動かすために

では多様化する若者の志向と、自社の求める人材をどのように整合すれば良いのでしょうか。

就活生の多くが売り手市場だと認識しており、一方的に情報を詰め込んだサイトを投げても、心をつかめません。Z世代の傾向から見ても、ラブコールが「熱烈」なだけではナンセンス。

採用サイトをラブレターに例えるなら、「あなたの希望は〇〇だよね。ボクと相思相愛になれば、こんなふうに二人で叶えていけるよ」といった構成にしないと、相手には響かない。

ここからは、相思相愛を実現するために、第一歩としておすすめな準備をあげておきます。

 

自社の魅力を書き出す

自社の魅力を書き出す
A4用紙に箇条書きで、思いつくまま自社の長所(魅力・強み)を書き出します。

少人数の組織なら全員、中規模くらいだと、経営企画や人事担当、営業など各部署から合わせて10人ほどが参加すれば良いでしょう。抽出目標は1人100個。絞り出す努力は必要ですが、あまり考えすぎず、多少被る内容があってもかまいません。とにかく仕上げる。

結果が出たら、メンバーで集まって分析しましょう。思いがけない発見があるものです。

社屋やアクセス、財務や待遇など、目に見えてたり数字に表われるものが出るでしょう。文化・風土、人間関係など、伝える表現は難しいけれど、特徴的な項目も見つかりますね。

カテゴリーに分類してまとめていくと、会社の良いところが立体的に見えてきます。参加者の視点は様々ですから、「こんな良いところがあったんだ」と、新たな発見があること間違いなしです。

みんなで揉んだら、コラム前段にまとめた就活生の志向に照らして、採用プロセスでのアピールポイントをあぶり出してみましょう。

 

求める人材のペルソナを作る

就活生その結果をもとに、訪れて欲しい志願者を、具体的なキャラクターとして設定します。ブランディングの世界では「ペルソナ」と呼ばれ、ターゲットをより鮮明にして緻密な企画につなげる手法です。採用プロジェクトをテーマとした場合の、あくまでも一例ですが、

・鈴木花子(23歳)
 学歴:「〇〇大学 文学部 英米文学科在学中」 卒論:『嵐が丘』のなかに表れる女性表現の特徴
 性格:まじめ 頑張り屋 こだわりが強い バイト:書店スタッフとして3年間
 資格:英検一級 就職への希望:留学経験もあるので、英語力を活かした仕事に就きたい

と、こんな感じです。実際に運用する場合は、さらに特徴を加えてリアルな人物像に仕立てます。

この「ペルソナ」には期待できる効果がいくつかあります。

まず、プロジェクトに関わるメンバーが、いつもペルソナを意識して担当業務を進めるので、方向性にズレが生じないこと。複数メンバーの協業やミーティングでは、迷走を抑える効果が期待できます。

また、ペルソナの生活や行動・思考に深く思いをはせる習慣を続けていると、新しいアイデアが見つかることも。インターンシップや会社説明会、パンフ、採用サイト、どんな企画にのぞむ場合でも、自分本位にならず、相手の目線に立つところから生まれるものがあります。
さらにペルソナには、合わせ鏡でうつしたときのように、「影」が連なっています。

たった1人に忠実に向き合う。目の前にいる人に話しかけるように。
馴れないあいだは、絞り込みすぎているように感じるかもしれませんが、実はその人の背後には近い個性をもった集団があり、メッセージを受け取る準備を整えて待っています。誰にでも通用するような語りかけは、メッセージをぼんやりさせてしまう八方美人になっていくだけになり、結局誰にも届かなくなります。

「たった一人を振り向かせれば、100万人に届く」
大阪のマーケター、坂本啓一さんの名著です。

状況はとらえようで変わる

いかがでしたか。採用難に打ち勝つ展開が少しは見えてきたでしょうか。
自社のサイトづくりに孤軍奮闘しているS君も、私のアドバイスを聞いてうなずきながら戻って行きました。

採用難、少子化、売り手市場、景気下降…周囲から聞こえるネガティブな言葉で、柔軟な思考が阻害されがちです。事業展開では、市場の動向を色々な角度から分析して活かすように、採用活動も少し視点を変えてみるだけで、活路はあるのだと思っていただけたでしょうか。

「就活生の志向の変化はわかるけど、採用サイトとのマッチングはどうしたら…」
「ペルソナが採用活動に反映されるって、具体的にはどんな感じ?」

そんな思いがわいてきた方は、ぜひ当社にお問い合わせください。
いつでもお待ちしております。