商品スペックを訴求するだけでは、もうモノは売れない。よほどの独占的な価値をもつ商品以外、ほぼ全ての業界において当てはまることだろう。
店頭で、またはネット上にひしめくオンラインショップの中で、顧客に「これでなきゃダメなのよ」と手を伸ばしてもらうために必要なもの。そして、1回きりでなく何回も購入してもらうために必要なもの。それはパッション、思い込み、強い愛情といった、ファン心理である。
今回はWebコンテンツを作るうえで、あなたの商品・ブランドのファンを育てるために必要な8つの取り組みをご紹介しよう。
ファン作りのために必要なこと
1.まず、社内にファンをつくる(インナーブランディング)
ブランドのファンづくりを行うため、最初にはじめるべきことは何か?まず社内にできるだけ多くのファンを育てることから始めよう。なぜなら、あなたの大切なブランドを売ったり、顧客対応をしているのは、他ならぬ社内のスタッフなのだから。
インナーブランディングという言葉を聞いたことがあるだろうか?リッツカールトンホテルやスターバックスの事例が有名だが、スタッフ一人ひとりの心のなかにブランド価値が確立されており、まるでスタッフ自身がブランドそのものであるように行動できるよう育成すること。その啓蒙活動を意味する。
インナーブランディングには、顧客満足度の向上を生み出すほかにも、仕事のやりがいや離職率の低下など、さまざまな効果があると言われている。
とにかく、社内でファンが生まれるほど心強いことはない。あなたのパッション、ブランド価値やその将来性について、スタッフとの共感を育てることは重要課題である。
2.メッセージはシンプルに。魔法の言葉を作れるか
社内ファンにも、もちろん社外にもブランド価値を伝えるために必要なのは、言いたいことをギュッと一つに凝縮することだ。
たとえば、スターバックスのコンセプトは「Third Place(家庭でもなく職場でもない第三の空間)」。スターバックスが売っているのは、コーヒーでも、新作のフラペチーノでもなく、あなたが寛げる第三の空間。しかも、ここには家庭や職場では味わえない、特別な雰囲気と特別な気分が得られる。だから、人が集まってくる。
とはいえ、スターバックスほどの強力でシンプルなメッセージをつくり出すことは簡単ではないだろう。しかし、自社の商品の良いところを並べるだけでは、なかなか伝わりにくいことは事実。商品スペックではなく、顧客にどのようなベネフィットを提供することができるかを考えてみることから初めてはいかがだろうか。
3.思いを伝えるために:裏方を見せる、生の声を聞かせる
人を感動させるためには「人の思い」が必要である。商品やサービスといった完成品ではなく、そこに至るストーリーがあってこそ、私たちは心動かされる。背景があってこそ商品スペックの価値が理解できる。
「そんな、わざわざ語るほどのことでは・・・」と日本人は謙遜することが多いが、自分たちの思いは言葉に表さなくては伝わらない。というよりも、言葉に出したとしてもそれが伝わるのは何十分の一くらいのものだ。それなら伝えない手はないだろう。あなたのメッセージに共感してくれる人はきっといる。
4.大切なことは何回も伝えよう
ファンは一日にしてならず。社内・社外にかかわらず、大切なことは毎日でも伝えなければ伝わらない。他人は、自分が思っているほど話を聞いていないものだ。だから、企業には行動指針やクレドといったものが存在する。社内であれば、社員の目に触れるところに共有したいメッセージを掲げよう。朝礼で何回でもそれについて、さまざまな方向から、さまざまなエピソードを交えて語ろう。
社外であれば、ロゴマーク、ブランドメッセージはもちろん、すべてのサービスにおいて顧客がメッセージを感じ取れるように工夫することだろう。
スターバックスでは、商品以外にも、照明の明るさやBGMの音量、椅子の座り心地、従業員の口調など、きっとすべてにおいて「第三の空間」に通じる取り組みがなされているはずだ。
5.惜しみないサービス精神を。ノウハウはどんどん提供する
いまコンテンツマーケティングという手法が注目されている。「当社の商品はこんなに素敵ですよ」と一方的に訴える、従来のプッシュ型の広告ではなく、まったく逆のユーザー視点に立って情報を提供し、そこから商品やブランドへの理解を促す方法だ。
具体的にいえば、ネットで何か調べ物をする人に対して「あなたが知りたいのはこれじゃないですか?」と専門的な情報提供を行うことで、信頼関係を少しずつ築いていく。
そこで、大切なことはユーザーに信頼される情報を提供できるかどうか、ということ。そのためには、出し惜しみをしてはいけない。
自社が築いてきたノウハウを紹介すると競合他社にも見られてしまうのでは?もしくは、情報を出し過ぎると逆に問い合わせしてもらえないのでは?そう思われる方が多いだろうが、特別な企業秘密以外はどんどん出すべきである。それによって得られるメリットの方が多いのだ。
6.伝える相手を特定して、メッセージは具体的に
そこで気をつけたいのは、せっかくの専門知識を提供しても、相手に分かりにくいようでは意味がない。
専門的な内容になればなるほど、気をつけなくてはならない。スペシャリストのあなたにとっては当たり前のことでも、素人のユーザーには分からないことも多い。プロであればあるほど、ユーザーは何が分からないかを判断するのは難しくなっていく。
そんなときは、伝える相手を一人に限定してみる。しかもできるだけ具体的に。
たとえば、あなたが高齢者むけ携帯電話の開発者だとして、商品販促のために何か書いてくれと広報担当から頼まれた。何を誰に伝えるか?開発者から発信する専門情報はさまざまだろうが、先に相手が決まらないと書くべき内容は異なってくる。
相手は、携帯電話の販売会社スタッフ?それとも、実際のユーザーである高齢者?高齢者は年齢によってはネットは使わない人もいる。それなら、実際の決定権をもっている子ども世代?ターゲットを絞ることで、書く内容はもちろん、ストーリー構成、言葉使いが見えてくるはずだ。
7.コスト効率を忘れることも必要だ
ファンづくりの取り組みは、ある意味、非常に非効率なものだと思う。パッションを何度も何度も語り、顧客が必要とする情報やサービスを何度でも提供し、それでも時にはまったく伝わらない場合だってある。
しかし、ファンを作るということは決して短期的な仕事ではない。メッセージは半永久的に発信していくべきものだし、それでこそ顧客の方も長期的につき合ってくれるだろう。
この非常に大切な仕事に対して、短期的にコスト意識や効率のことを問うのはやめよう。
8.ファンがファンを生む仕組みづくり。ソーシャルメディアなど
やがて努力が報われファンが育ってくると、マジックが起こり始める。ファンが人を呼ぶのだ。分かりやすい例でいえば、FacebookやはてなBookmarkなどのSNS効果。誰かが「この記事おもしろい」とシェアしてくれると、そこを伝って何十人という人たちを呼んでくれる場合もある。
ファンというものはありがたい存在で、ファンが発したひと言は、企業側が伝える100の言葉よりも偉大な力をもっている。
そういった嬉しい効果を生み出すためには、ある程度の仕掛けも必要だ。ファン同士の情報共有がしやすいとか、「好き!」という気持ちを共有できる仕組みなど。オンラインショップでよく見かけるお客さまの声や人気ランキング、オフ会、ブログ記事のSNSボタン設置などなど。大掛かりでなくてよいので、ファンの気持ちを理解し、何かお膳立てしてあげる機会をつくることも必要だ。