心に響く文章は、読み手の行動を変える力を持っている。たった一行の文章で、読み手に商品を買わせることも、自社に対して良いイメージを持たせることも可能になる。
そんなことできるのは、ほんの一握りのプロくらいでしょ、とあなたは思っているかもしれない。しかし文章の素人でも、やり方しだいで言葉の力を引き出すことは可能なのだ。
ただし、それにはコツがある。言葉を通じて想いを伝え、読み手のアクションを引き出すためには、どんなことに気をつければよいのか。ライティング初心者の視点に立ってひとつずつ解説していこう。
想いが伝わる文章のための大前提
伝わる文章を書くために最も大切なこと―それは、「伝えたい想い」をどれだけ強く、明確に持っているか。
想いが強ければ強いほど、良い文章になる可能性を秘めている。逆にそこがあやふやであったり、そもそもない、そんな状態ではどんな優れた書き手でも良いものは書けない。
文章を書くということは、想いを言葉化して表現するということ。表現すべき元の何かがなければ、書けるわけがないのだ。まずはしっかりと、自分が発信したいメッセージを確認してほしい。
文章は現場から生まれる
何が語りたいのかわからない、語りたいことがないという人は、まずはそれを探すことから始めよう。
はじめにすべきことは、パソコンの前から一度離れ、現場へ行ってみることだ。文章は「想い」から生まれる。そしてその「想い」を生み出しているのは人間だ。ならば人間がいる現場へ行くのが、「想い」を見つける一番手っ取り早い方法、というわけだ。
たとえば、自社商品のよさを語りたいならば、その商品を使ってみよう。食べ物ならば食べ、着るものなら着てみよう。商品が生まれた現場へ行き、商品を生み出した人たちの顔を見、声を聞くのもいい。現物を手に取り、においをかぎ、あらゆる角度からじっくりと観察すること。五感を総動員して、気づいたことを書き留めれば、それが語りたいことの種となる。
伝えたいこと、語りたいことさえ見つかれば、ほぼ8割は書けたようなもの。だからこのプロセスは時間をかけて、自分が本当に語りたいと思えるネタを見つけてほしい。
自分の言葉で語る
「想い」が見つかったら、いよいよ文章にしていこう。このとき、気をつけるべきことは「自分の言葉で語る」こと。どこかで見つけた小洒落たフレーズや、何にでもあてはまりそうな抽象的な言葉を使ってはいけない。
安易に使えば、文章の鮮度がぐっと下がってしまう。あなたが自分の目で見、心で感じたことをできるだけ具体的に…そんなもぎたての言葉だけが、人の心を動かすことができる鮮度を持っている。
スマートじゃなくても、つたなくても、想いが真っすぐに表現された文章に人は好感を持つもの。自信を持ってオリジナルの言葉で語ってほしい。
読み手への思いやりを忘れない
もうひとつ、気をつけてほしいことが読み手を思いやること、“おいてけぼり”にしない、ということだ。具体的に4つ、ポイントをあげてみよう。
- 話はぼやかさず、核心から入る
- 重複しているところ、無駄なところをチェックし、削れるところは徹底的に削る
- まわりくどい表現、分かりにくい比喩などはしない
- 自分の気持ちを押し付けない
読者に共感を持って読み進めてもらうには、分かりやすさが第一だ。自分の文章に分かりにくいところがないか、くどいところはないか、チェックしてみよう。
忙しい現代人は、早く情報を得たいと思っている。ビジネス文書でもSNSでも、明快で分かりやすいほうが喜ばれるもの。逆に言わなくてもいいことをいちいちくどくどと書いていては共感は得られない。
また、自分の感情を押し付けるような文章は嫌われる。感動を伝えたければ、事実や具体的なエピソードに語らせることで、読者の自然な感動を引き出そう。「とても」や「本当に」などの強調する言葉も使いすぎれば逆効果。極力控えめに使うようにしよう。
書き終えたら間をあけて読み返す
文章力に自信がない、という人は、ぜひこの点を徹底してほしい。当然すぎるほど当然のことなのだが、できていない人が多い。言うまでもないことだが、誤字脱字は読み手の信頼を損なうのでしっかりチェックを。
そして、できれば一晩ねかせてから、もう一度読み返すことをお勧めする。少し間を空けることで、第三者の視点で読むことができるからだ。書いていた時は見えなかった重複や回りくどさ、分かりにくさを見つけられるかもしれない。粗削りだったところをシャープに研ぎすますイメージだ。このひと手間で、文章がワンランクアップすることを請け合おう。
今すぐ使える、まとまりのない文章をサクッとまとめる技
書きたいことがありすぎて、ぜんぜんまとまらない!そんなライティング初心者にお勧めしたい現実的な方法がある。
まず、小さめのメモ紙を10~20枚ほど用意し、1枚に1文、言いたいことを書く。あくまで1枚に1文、このルールは守ってほしい。
これを机の上に並べてグループ分けをする。似たようなことを言っているメモ紙や、内容がつながっているメモ紙は同じグループに。違う内容のメモ紙は違うグループに。机の上にはいくつかのグループができるだろう。
そのグループを、起承転結の順に並べ変える。あとはつなげてひとつの文章にするだけだ。
この作業をすると、結局同じことを言っているだけのメモ紙が数枚重複していたり、起承転結の「結」にあたるグループがない、などという問題が一目瞭然になる。重複しているメモ紙は、一番大事な1枚を残してあとはポイしてしまおう。そして「結」にあたる一行を書いたメモ紙を1枚作ればよいのだ。
まとまらない、というときは、たいてい同じようなことを何度も繰り返していたり、起承転結のどれにもあてはまらない、脱線したトピックが混じっていたりするものだ。もちろん、脱線トピックは、クシャクシャポイしてほしい。
その想いは、また別の機会に語ろう。余計な飾りをばっさりと切り捨てることで大切な一文に力が集中し、ズドンと伝わることもあるのだから。