電車の中吊り広告で、女性誌の秀逸なキャッチコピーに思わず感心してしまったことはないだろうか?
「ゆるエレ服」「アガる↑夏靴」「脱げるカラダになる」「艶シンプルでいこう!」などなど。省略形やカタカナ混在、刺激的なもの、よく分からないけどなんとなく惹かれそうなものまで実に多彩。おおよそ男性誌よりずっとキャッチーであり、感覚的だ。
女性に聞いてみると、やはり中吊り広告で気になった雑誌は、店舗で手に取ってみることが多いという。女性誌のキャッチコピーは、まさにターゲットを行動させる力を持っているということになる。
女性誌の秀逸なキャッチコピーのように、ターゲットを行動に至らせるポイントをつかめば、あなたの会社の販促に役立つことは間違いない。マーケティングは、ターゲットを行動させてこそ価値があるのだから。
なぜそれほどまでに女性誌のキャッチコピーは秀逸なのか?
端的な答えは、それで雑誌の売上がまったく変わるから。
1996年をピークに、売上が減少し続ける出版業界。雑誌の売上も年々落ち込んでおり、2013年の5,879億円は2000年に比べると32.4%もの減少となる。この雑誌不況ともいえる状況で、女性誌を出版する各社は驚くような「おまけ」戦術や流行語にもなってしまうような言葉を創造し、いかにターゲットの目を引くかに苦心している。
こういった切実な背景もあり、女性誌の見出しはよりキャッチーに、過激に進化しているというわけだ。
キャッチコピーの秀逸さは、リズム感、キーワードの心地よさにある。
目を引く女性誌のキャッチコピーは、総じて短い。3文字、4文字、6文字といった創作キーワードを中心に据えた組み合わせだ。
「ゆるエレ」は、「ゆるめだけどエレガント」の略。「艶シンプル」は「艶やかだけど、ゴタゴタした感じではない」。「○○○だけど△△△」のように、今まで結びつかなかった「○○○」と「△△△」を結びつける公式が多く、そこから生まれるリズム感を大切にしている。
日本語として正しいかどうかなど、問題ではない。女性たちは感覚的にピンとくるかどうかを重視するのだ。
「○○○だけど△△△」といった意外性を強調したキャッチコピーは、テレビ番組のウケ狙い企画と似ている。
視聴者は「小学生なのに、剣道八段」や「かわいいのに大食い」など、「えっ?」と感じてしまう企画だ大好きだ。女性誌の企画も、「えっ?」と感じさせ、ちょっと誌面をチェックしたいと強力に惹き付けることが大切なのだ。
秀逸なキャッチコピーを作るヒケツ
読者がイメージしやすい、やさしい言葉を使う
瞬間的に理解できるように、言葉はやさしいものであるべきだ。おそらく読者は、コンマ数秒で「好き」「嫌い」を判断してしまう。イメージしにくかったり、何通りにもとれる言葉を使うと、それを頭のなかで咀嚼するだけでコンマ数秒しか使わない判断のための時間をオーバーしてしまう。
キャッチコピーの意味を咀嚼などさせてはいけないのだ。
短く、短く
これも時間と関係する。
読ませるのではなく、見せるということだ。長い一文をじっくり味わいながら読み進むのは、女性誌の中吊り広告をチェックしている私くらいのもので、一般の読者は一瞥するだけだ。瞬間的に理解できるように、短く伝えることが大切だ。
企画内容や商品の本質を伝える
やさしい言葉で短くまとめる。
そんな簡単にできることではないが、それ以上に必要なのは、きちんと伝えるべきコトを伝えるということだ。秀逸なキャッチコピーのサンプルを見る前に、冒頭でいきなりハードルを上げてしまった気がするが、これを外すわけにはいかないので仕方ない。しかし、仕事としてコピーライティングをする以上、必須項目だ。
>女性誌の秀逸キャッチコピーから盗む!クリックさせるテクニック、後半は
女性誌のキャッチコピー、具体例をみてみよう。
1.「パリの『ナチュ盛り』スタイル実況中継」(LEE)
女性誌の鉄板企画「街角スナップ」。スタイル抜群の美しいモデルが、スタイリストにコーディネートされた衣装を着ているのをチェックするのもいいが、やはりふつうの人が実践しているその人なりのコーディネート、着こなし術がいちばん親近感があり気になるところ。
つまり、「コレなら、私にも応用できそうだ」と。しかし相手は、ファッションの都を闊歩するパリジェンヌである。しかも編集部に選ばれし者たち。女性たちはきっとため息混じりに特集ページをめくったに違いない。
このキャッチコピーで秀逸なのは、「ナチュ盛り」という表現。めいっぱいのナチュラルさ、作った感のないごくごく自然な印象といった意味だが、ナチュラルを盛ってしまうところがすばらしい。
実はLEEのこの号で私の目を釘付けにしたのはサブ特集だった食べ物記事の見出し。
「夏の”イケ麺”パラダイス」
よく観察してみると、女性誌のキャッチコピーには、意外とダジャレが頻出している。それもおやじギャグレベルのものが多い。
2.「働く女性の年収ビッグデータ」(oggi)
ビッグデータが本来持つ意味と、oggiの特集記事のキャッチコピーが指す意味はまったく異なる。それより、女性たちが「ビッグデータ」という言葉を知っていることが大切なのだ。
ICT系企業のCMや新聞の見出しで踊る「ビッグデータ」に興味はない。でも否応なく耳に入ってくるようになってしまった言葉を「拝借」しているのである。やはり女性誌のキャッチコピーは感覚的なのだ。
先のおやじギャグ+感覚的キャッチコピーでもうひとつ。「『高い』も『安い』も愛してる。40代的美女ノミクス!」(美ST)。もしかすると、編集部から安部政権への痛烈な皮肉なのだろうか。
3.「母さん、夏の終わりに豹になる」(VERY)
このキャッチコピーで検索すると、ブログがいくつも出てくるほど2010年夏の終わりに話題となったもの。
「母さんが豹になる」とターゲットの意表を突くが、実際にトレンドになりつつある「ヒョウ柄」という現実がしっかりとベースにあるので、一発屋的な話題作りだけで終わっていないのがすばらしいところだ。
大阪の天神橋筋商店街なら、豹になった母さんたちを一年中見物できるが、「ふつう」はそんなに見られないものであるがゆえに、話題になれたわけだ。
4.「10日でつくる見せたいカラダ」(美的)
夏になると、女性誌は一斉にボディケア特集を組む。薄着になり、素肌をさらすことが多くなる夏に向けた記事の見出しだ。せっぱ詰まった女性たちは中吊り広告を見上げて一様につぶやくはずだ。
「10日?」「うそぉ~」「できるわけないじゃない!」。
しかし彼女たちは帰り道のコンビニで雑誌をちゃっかり手にとってチェックしてしまっている。
5.「賢い女性は美しい!ワザで輝く厳選10着1ヵ月コーディネート」(marisol)
女性誌の鉄板特集「着回しコーディネート」のキャッチコピー。いかに少ない点数を工夫することで、まるで違う服をまとっているかのようなコーディネートとなるか?が興味の対象だ。
しかしこれを「ワザで輝く」から始めてしまうと、ふつうの見出し。最初に「賢い女性は美しい!」と打ち出したことに意味がある。ターゲットにしている少しお姉さんたちにとって「賢い」は、気になる言葉。
そのワンフレーズを入れるだけで、いつもの単純な着回しテクニックではなさそうに見えてしまう。「これは買っとかないと!」と思わせるのである。
秀逸なキャッチコピーは応用がきく
たとえば女性向けのアイテムを扱うECサイトでは、このような手法が大いに効果を生む。私たちも、女性誌から学んだものを洋菓子店で利用したことがある。
「40代モテ女子のための、少しずつセット」。
焼き菓子のアラカルトに付けたキャッチコピーだ。「母さん、夏の終わりに豹になる」まで突き抜けるとクライアントに確実にダメ出しされるので、理性をもって寸止めしたコピー。前半の部分など、ほとんど意味をなさないが、実際にはメルマガで紹介した商品のなかでクリック数が第2位となってしまった。
女性誌のキャッチコピー、そのエッセンスはきわめて「感覚的」ということだ。男性はとかくロジカルにものごとを考えすぎで、感覚的なところが少ない。ショッピングに関しても、女性はきわめて感覚的(「かわいい」かどうかなど)に買う、買わないを判断する。その特性を集約したともいうべきなのが女性誌のキャッチコピーなのである。
キャッチコピーを真似ることに、罪悪感を抱いてはいけない。
昔からセールスコピーの業界では「スワイプファイル」という、過去に高いレスポンス率を記録したひな形があり、ライターはこれをアレンジしてライティングを行うことがよくあるのだ。
具体的には、コピーのロジックや切り口などを参考に、自社の商品・サービスに合うように修正するというもの。そうすれば、過去の実績からある程度の反応を稼げるのだ。
キャッチコピーを真似ることに、決して罪悪感を抱いてはいけない。この記事で紹介した女性誌のキャッチコピーの切り口は、上手くアレンジすればきっとあなたのビジネスに役に立つ。ビジネスも勝った者が強いのだ。
キャッチコピーの作り方:ターゲットをとらえ、商品が売れる3つのポイント
WEBライティングについて、もう少し詳しく
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平田 弘幸
株式会社フレイバーズ代表取締役。セールスライティング担当。好きな言葉は、「一生懸命が得意」