コラム(ブランディング)

ブランディング 2022年8月10日

インターナルブランディングが、会社の未来を明るくする

社内で相談する男女

会社を良くしたいと思うのは、経営者ばかりではありません。
経営者と視座はちがうかもしれませんが、一般社員も自分がしている仕事を意味のあるものにしたい、しっかりとした存在意義のある良い会社にしたいと考えていることは、たしかなことだと思います。
経営層と一般社員、立場や視座は違えど、同じことを考えている人たちが集まった組織が、同じ方向を向いて事業を進めるためにあるのがインターナルブランディングという企業活動です。これは、組織の根源ともいえる考え方を端的な言葉(ブランド・アイデンティティー)に集約、全社でその御旗を共有し、事業を進めるうえでの拠りどころにするというものです。

 

ドラッカーも伝える、インターナルブランディングの基本

ビジネスピープルなら、誰もが知っているP・F・ドラッカー。彼は著書「プロフェッショナルの条件」のなかで、こう伝えています。
成果を上げるために必要なキーワードは「貢献」。この貢献が意味するのは、

① 所属する組織が社会にどのような貢献をしようとしているかを深く理解する。
② その組織が自分にどのような貢献をしてほしいか考えて行動する。

①は、この数年注目されているパーパス、つまり会社の存在意義です。なぜ会社が事業をしているのかを明確に理解すること。ただ実際のところ、経営層も含めた全社員が同じように自分たちの存在意義を明確に定義できているかは、残念ながら疑問です。②は、会社の存在意義を実現するために、個々の社員が何をなすべきかを理解し、行動すること。すべての人が同じことができるようになる必要はないとも彼は著書のなかで述べています。たとえば、セールスは苦手だけど、コンセプトの立案や緻密な資料づくりが得意な人は、セールスは得意だけど事務仕事は苦手な人を補完すればいい。チームとして全体が強くなれば、大きな成果が期待できるということです。

インターナルブランディングは考え方だけを共有して終わりではなく、活動の結果個々人が何をなすべきかにまで至ってこそ会社が次の階層へと進みます。P・F・ドラッカーのプロフェッショナルの条件その1にある考え方を理解し、実践することで結果につながっていくのです。

インターナルブランディング

退職理由から考える、ブランディングの必要性

 

職場で悩む男性

厚生労働省が発表した「雇用動向調査」(令和3年上期統計)で明らかになった退職理由(20歳~39歳)は、男女ともに給与、労働条件などの待遇面が1位、2位を占めていますが、「会社の将来が不安」(男性28.3%=4位、女性30.7%=3位)にも注目すべきです。財務的な問題もあるとは考えられますが、「仕事の内容に興味を持てなかった」(男性19.4%=5位、女性15.4%=6位)と併せて考えると、会社が社員に希望を与えられていなかったことも大きな要因のひとつになっている気がしてなりません。

もし、自分たちが存在する理由(=パーパス)を明確にし、共有ができていれば、この数字はもっと低いものになったのではないか、と感じてしまうのです。

前述したように、一般社員も自分が働く環境を良くしたいと考えています。ただ、視座が異なるぶん、経営者から見れば甘いと感じるかもしれません。しかし、そうやってバッサリ斬ってしまうと、なにも良くはなりません。いろいろな意見や視点を聞きながら、なにがいまベストなのかを考えていくことが肝要なのです。

社内でのすり合わせがインターナルブランディングの要諦

 

部門別のミッションの捉え方の違い

ここまでで、全社が同じ御旗(ブランド・アイデンティティー)を見据えながら個々の仕事の質を高めたり、やるべきことを定めたり、判断したりできるようになることが大切だとお伝えしました。その御旗がブランド・アイデンティティーではなく、それが企業理念であったり、社訓であったり、ミッションであったりしても構いません。

要するに、同じものさしを持ってものごとを考えていく、ということが大切なのです。

しかし実際にこの活動を進めていくと、課題が出てきます。
Aさんは、ミッションから考えると、答えは〇だと。Bさんは△だという。この際に、なぜ〇なのか、△なのかを話し合い、理解するということ。Aさんが△もアリだねと納得できることで、ミッションに対する社内の規格(許容範囲といってもいいかもしれません)ができていくのです。

たとえば、Aさんは営業部門、Bさんは製造部門だったとしましょう。
Aさんが主張していた〇は迅速な納期のこと。Bさんの△は、ていねいに作り上げた製品を出荷するということ。ミッションにしたがってAさんは早く多くの方が喜ぶ顔が見たかった。他方、Bさんは間違いのない製品で、良い暮らしの一助になりたいと考えたのです。メーカーである限り、人々の暮らしを支える製品をつくる。品質が低いものを急いで出荷しては本末転倒だ、とAさんが理解したわけです。

インターナルブランディングでたいせつなことは、定めた御旗(ブランド・アイデンティティーや理念、ミッション)について、社内でいろいろな捉え方、感じ方をすり合わせていくこと。この活動が絶え間なく続いていく組織になれれば、つねに判断基準が御旗に沿うことになり、全社がそれぞれ近い思考を持つことになります。もちろん、狭い規格のなかに全社員がおさまるようにすることが活動の要諦ではありません。多様な考え方があってこそ、すり合わせという作業がはじめて起こるのですから。

経営層が動くと、全社が動く

 

社員の打合せ風景

社内でのすり合わせ作業をどうやって行っていくかは、非常に大きな課題です。
ブランド・アイデンティティーは決めたけれど、ミッションは定まったけれど、そこがゴールになってしまっては、何の意味もありません。すり合わせが行われなければ、ほんとうに何の意味もないのです。

インターナルブランディングの要諦、社内でのすり合わせについては、経営層にひと肌脱いでいただきたい、と強くお伝えしておきます。

社員の輪のなかで、この言葉について自分はこう感じるのだけれど、みんなはどう思う?と問いかけます。正反対の意見が出てきても、そういう捉え方もできるのかと気づき、学んでいく。社員も同じように気づき、学ぶ。そこは、こうあるべきだろうと範囲を超えたと思われる考え方は、納得するまで話し合って解決する。
こういったプロセスを設けることが社内の考え方をまとめ、向かうべき方向に導くことにつながるのです。間違いなくそれは、長い旅。でも、どこかの時点で「ミッションに照らし合わせて考えると」という議論が社内のどこかから聞こえてきます。想像してみてください。きっとそれは会社の明るい未来です。

シェアする
  • line

別のコラムにもヒントがあるかも・・・

このコラムに興味があったなら、
こんなコラムも

執筆:平田 弘幸

フレイバーズに、ご相談されませんか?