コラム(採用サイト)
採用サイト 2024年12月26日
採用サイトのコンテンツ、早期離職を防ぐために
「突然、辞めたいですと言われて、ショックだったんですよ」
中堅メーカー企業の採用担当をしているS君が、ため息まじりに話しかけてきました。自分が採用にかかわった社員で、入社してまだ1年だそう。おとなしくまじめなタイプで、これといった前兆もなかったようです。
「Z世代だから、あっさりしてるんでしょうね」と、あきらめの表情。
あいづちを打ちかけましたが、「ダメもとでもう一度よく話をしてみたら」と、アドバイスしました。ふだん、採用活動について悩んでいる姿を目にしていたので、何か解決のヒントをつかんで欲しいと思ったからです。
離職希望の彼が言うには
「仕事がおもしろくなくて、ずっとコレをやるのかな…と」
「キャリアパスやスキルアップがイメージできず、変化のない毎日に気持ちが萎えました」
淡々と語られたのは、こんな理由だったとか。
S君は、会社のキャリアパスやスキルアップを説明し、他にも仕事はあるからと再考を求めましたが、彼の心には響かなかったようです。「石の上にも三年」と慰留を切り出したら、「三年で何か分かりますかね」と、あっけなく切り返されて言葉に詰まったと。
「この会社は、こんなもんか」。いったん期待外れの思いになると、修復は難しかったりするものです。
結果から見えてきたこと
これが世にいう「ミスマッチ」なのかと、落胆する背中を見ながらも、二人で原因と対策を話しました。
会社として、ここまで採用と教育にかけたコストは膨大です。去りゆく者への損切りは仕方ないとして、次なる糧にしようとの強い思いがわいてきます。新人らしからぬ捨て台詞は、率直すぎて耳に痛かったのですが、気を取り直して改善の方向性を探ります。
振り返ってみると、入社後のケア不足も含め、たくさんの改善すべきポイントがあがります。そこから、いま最優先にすべきアクションは何なのか、絞り込んでいきます。
①仕事内容について、具体的で詳細な情報を伝えられていたか。(インターンシップ・説明会など)
②キャリアパスやスキルアップについて、就活生の理解は充分だったか。(面接・内定後など)
③採用サイトやパンフレットについても、上記二点について不備はなかったか。
いずれも就活生なら関心を抱く重要なテーマですが、入社前後で納得させるタイミングを逸していたようです。
とくに「仕事内容」については、最も知りたい項目ながら情報は不足しがちで、かつ入社後のギャップを生む原因になるとの調査結果もあります。
【企業の採用サイトに関する調査結果】求職者の視点から見た「採用サイト」の重要性と課題
インターンシップや会社説明会は限られた時間の情報共有ですが、採用サイトやパンフは志望から内定まで制限なく、いつでも就活生が参考にできるアイテムです。いま、ここにしっかりとした情報を掲示しないわけにはいきません。
採用サイトで伝える「仕事内容」
まずは「仕事内容を伝える」ことに焦点をあて、S君がディレクションしたという採用サイトもチェックしながら、改善の施策を伝えていきました。
組織と仕事をわかりやすく伝える
よくあるのは、各事業と部門・部署に担当業務を紹介して終了、というもの。
ある程度は詳細な内容が必要ですが、中堅企業でも項目を細かくすると相当な文章量になります。そもそも業界に精通している就活生は少なく、「文字離れ」の傾向もありますから、熟読には至らないことも。
そんな場合には、会社の事業と、流通・市場などの経済環境を、フロー図にまとめるのも一案。就活生が自身の志望傾向から、やりがいを感じるセクションの存在を探す地図の役割を果たします。会社規模にかかわらず踏襲できる手法なので、一例をあげておきます。
また、こうした図をもとに、事業・業務の内容や、実際に働いている社員の声にリンクさせるのもひとつのやり方ですね。
仕事にむきあう臨場感を伝える
新入社員や先輩社員の声、クロストークをメインに活用します。インタビュー記事は就活生が何度も目を通してしまう「キラーコンテンツ」。でも、ワンパターンの一問一答では何も伝わりません。仕事ぶりや個性が際立つような質問を投げかけ、その存在感が社風を物語るイメージを醸し出すように回答を再構成するのがコツです。
就活生に、「この人、自分とキャラが似てるな」と思わせるレベルに仕上がれば最高です。
「仕事内容」という観点では、成功や失敗の体験談、感情の揺れも汲み取って構成しましょう。エピソードトークで、上司や顧客とのかかわりも添えれば、さらにリアルなストーリーとなって、読み手の疑似体験につながります。
先輩インタビュー | 採用情報 | スポーツ用品、ファッションアイテムのイモト
クロストークでは、参加メンバーを工夫することで、社風や歴史、経営理念と相通ずる良き伝統を感じさせることができます。社歴や担当業務、階層や年齢が、バラエティ豊かな方が、おもしろくなりそうです。
企業活動を一言で表すときも、「〇〇イズム」「〇〇クオリティ」などのワードが使われますが、現場をよく知る社員の声からそれが読み取れれば、就活生からの信頼も得やすいでしょう。
経験を重ねつつ、成長するプロセスを伝える
「この会社を選べば、成長への追い風になるはず」と、就活生は期待します。給与などの対価以上に、仕事についての達成感や充実感、成長に向けたサポートを重視する傾向もあります。
資格取得への補助、スキルアップ研修や教育制度は、関連する数字を明らかにすると効果的。マトリックスなど図表を活用してわかりやすくすると好印象に。
キャリアパスを知ってもらうために、先輩ストーリーをまとめている企業もありますよ。
「それから、求める人材を伝えるのも大切だね。チェックボックスがついた箇条書きで、こんな人に来てほしいという項目をあげているところもあったな。しっかりしたサイトは、採用コンセプトや人事担当者の考えを明らかにする単独ページを作り込んでいたり…」
すると、「ちょっ、ちょっと待ってください!」と、S君。「頭がいっぱいになってきました…」
私が、勢い込んで一気に話しすぎたのでしょう。少しあわてた表情で、これから人事や経営企画担当と相談するとのこと。離職騒動からうけた傷心は、いつしかどこかに飛んでいったようです。
就活生の傾向や求めるものに目をむける
最初にS君がつぶやいた「Z世代」。すっかり定着しているようですが、私には少し抵抗があります。集団を端的にイメージするには便利ですが、個々の実態をとらえる感性を鈍くしているような気がしてならないのです。
昭和世代と違って、入学してほどなく就職について考えなさいと迫られる大学生。専攻分野の学業に追われながらの就活です。忙しさから社会との接点も少なかったり、自身の個性を世の中に活かすビジョンに至らないまま仕事に就く展開も容易に想像がつきます。
そんななか苦労の末に内定をもらったりすると、いわゆる「楽観バイアス」が働いて、思考停止になっている求職者もいるでしょう。「内定が出たのだから、たぶん自分には合っている、大丈夫」と。
アンケートがすべて正しいとはしませんが、就活生の関心の上位に「仕事内容」があがる事実。
採用サイトから得たい情報も、入社後のギャップを感じる原因も「仕事内容」。
採用する側としては、このテーマを志望者といかに共有するのかが、入社前後のトラブルを避けるポイントになりそうです。
採用サイトを通じて、求職者に仕事内容や成長へのプロセスをリアルに受け止めてもらい、内定辞退や早期離職のリスクを減らしたいとお考えの際は、ぜひ当社にご相談ください。