コラム(採用サイト)
採用サイト 2025年4月21日
中小企業の採用力を高めるブランディング戦略
「最近、本当に人が採れない」
これは、今多くの中小企業の社長が口をそろえて言う言葉です。求人を出しても応募がない。良い人が採れたと思えば、内定辞退。人手不足を理由に新規事業を控える企業さえ。
人材獲得競争が厳しくなるなか、採用活動は「採る」と考えるのでなく、「選ばれる準備をする」ことと捉え直す必要があります。その土台となるのが、自社のブランディングです。
ただしここで言うブランディングとは、見た目を整えることではありません。たいせつなのは、「なぜ今いる社員さんがこの会社を選んでくれているのか」という理由を探ること。そして、それを言語化し、魅力として就活者たちに伝えることです。
ブランディングは中から始まる、でも一人でできるものではない
中小企業にとっての採用ブランディングは、社員さんたちが日々感じている「自社の良さ」を掘り起こし、それを採用のメッセージに変えていくこと。それが、最も効果的で再現性のあるブランディングの方法です。
ここでもういちど伝えておきたいのは、再現性ということ。すでにそこにいる社員さんたちは、何らかの理由があって自社に根付いてくれています。彼らが感じている理由(自社の良いところ)は、まだ見ぬ人たちにも共感できるものがあるはずです。それを上手く伝わるように仕立てていけば、「ここがいい」と感じてくれる人が必ず現れるのです。
ただ、ここで一つ大きな壁があるのも事実。
経営者が社員さんに直接聞いても、本音は出にくいのです。社員さんたちは宮仕えなのですから、どうしてもそこに忖度が生じます。たとえ社長がオープンな人柄であっても、社員から深い話を引き出すのは簡単ではありません。
外部の力で本音を引き出す
だからこそ、第三者の存在が重要です。社内にいない外部の目が入ることで、社員はよりフラットに話せるようになります。
たとえば、ヒアリングやインタビューを外部に依頼すれば、社員さんたちは社内の空気を気にせず、本音で話しやすくなります。経験豊富なプロが聞き手になれば、単なる感想ではなく、言語化されていない価値観や職場の文化を引き出すことができます。
実際、私たちが関わった企業でも、次のような本音が社員さんへのインタビューから出てきました。
「正直、最初は待遇よりも人の良さで決めた」
「決め手は社長が面接で家族の話を聞いてくれたこと」
「大企業では味わえない自分ごと感があるのが魅力」
これらは社長の前ではなかなか出てこない言葉ですが、実は会社の本当の強みであり、それが就活者に刺さるポイントになります。
見えてきた良さを、さらに伸ばすのも経営者の役割
社員さんへのインタビューを通じて、「自社の良さ」が見えてきたとします。たとえば…
「小さな会社だけど、一人ひとりが役割を持って活躍できる」
「社内の雰囲気があたたかく、上下関係がフラット」
「社長が現場に顔を出してくれるので、距離が近い」
こうした声は、単なる満足度ではなく、他社にはない強みになり得る要素です。そして、それを「もっと居心地のいい環境にする」ことこそが、経営者がこれから先ずっと続けていくべき仕事のひとつになります。
たとえば、「社員同士の距離が近い」と感じているなら、その文化を強化するために定期的な小規模ミーティングや対話の場をつくる。
「挑戦できる風土」が良いと思われているなら、新しいアイデアを試せる制度を設ける。
そうして「強みを仕組み化」することで、社内に定着し、やがて外からも見えるようになります。
継続的なブランディングが、採用活動の質を変える
一度、社員の声から自社の良さが見えたとしても、それで終わってしまっては意味がありません。ブランディングは「施策」ではなく習慣にすべき取り組み。継続して磨き、育て、発信し続けることではじめて「この会社は本当に良い雰囲気だな」「ここで働きたい」と思ってもらえる力になります。
まず取り組みたいのは、社内の価値観や強みを定期的に見直す仕組みを作ることです。年に1〜2回、外部パートナーを交えた社員インタビューを行い、会社の「いま」を把握する。そこから見えてきた変化や新たな魅力は、採用コンテンツにも随時反映します。
次に重要なのは、情報を「見える形」にして発信すること。ホームページや採用ページ、SNS、会社説明会など、あらゆる接点で一貫して自社の良さを伝えることで、就活者とのミスマッチも減り、「なんとなく応募」ではなく、「ここで働きたい」という意思を持った人材が集まりやすくなります。
そしてもう一つ、ブランディングは採用だけに効くわけではないということも、見落としてはいけません。社員が「自分の会社って、けっこういい会社だな」と再確認する機会になり、エンゲージメントが高まり、離職防止にもつながります。内部の満足度が高まれば、自然と人にも勧めたくなる会社になります。それがリファラル採用(社員紹介)という形で、さらに良い人材を引き寄せていく。
つまり、継続的なブランディングは、採用・定着・紹介といった人材戦略全体の土台になるのです。
強みを「見つけて終わり」にしない。育て続ける会社が、選ばれる。
採用に困っている企業は多いものの、実は解決策は外にありません。
今いる社員さんたちが感じている自社の良さを、第三者の視点で丁寧に掘り起こし、そこから会社のブランドを再構築する。
そして、その強みを活かした環境づくりに経営者が本気で取り組み続けることで、会社そのものの魅力が底上げされていきます。
「この会社に入りたい」ではなく、「ここで働きたい」と思われる会社へ。
それをつくるのは、一時的な施策ではなく、社内の声を聞き、それを育てる日々の姿勢なのです。