能面のような表情にさえ見える相手のバリアを解除して、腹の底に横たわっている本音を引き出せれば!と感じたことはないだろうか。この記事を偶然見つけたあなたは、非常にラッキーかもしれない。私たちが15年以上もWEB制作会社を運営するなかで培ったノウハウを公開しようというのだから。
具体的には、新たなコンテンツを立ち上げる際に、製品やサービスの開発担当者やトップマネジメントにインタビューを行う。彼らから根掘り葉掘り聞き出すコツとそれをまとめるための手法を紹介したものだ。
おそらくこの記事を斜め読みした3分後には、あなたのなかに「!」マークがポンと飛び出していることだろう。
インタビュー・取材を成功させるコツとは?
「取材相手によって、いい話が聞ける時と上手くいかないことがあった」
「話好きの相手のペースにハマってしまい、本当に聞きたいことを質問できずにインタビュー時間が過ぎてしまった」
そんな苦い経験がないだろうか?
さっそく、聞き手のペースで興味深い話を引き出し、限られたインタビューの時間を有効に使うためのコツをご紹介しよう。
コツその1 : 予めゴールを準備しておく
いいインタビュー記事に仕上げる最大のコツは、取材当日までにあらかじめ自分のなかでストーリーを用意しておくこと。取材しないと、どんな内容になるか分かるわけないじゃないか?と思われた方がいるかもしれない。しかしそれは大きな間違いだ。
まずプロは、インタビューの前にしっかりと情報を収集する。そして読者が興味深いと感じてくれるようなコンテンツの組み立てまでしてから取材に臨むことが多い。行き当たりばったりでインタビューを行っても、面白い話が聞けるかどうかなど2階から目薬を差すほど難しいことを知っているからだ。
あらかじめ用意するコンテンツは、大枠でよいので話の流れを決めておいたもの。もちろんコンテンツとなるインタビュー記事は、運営者の意図を反映したテーマにそった話の流れ、「理想」にしておく。そうなれば、このテーマで質問したい、具体的なエピソードや相手ならではの言葉を加えたい、というような質問の組み立ても用意できるようになる。
では、ライブ感が多少失われても、取材前にストーリーを組み立てておくメリットとはどういうものだろうか。
1-1. いちばん伝えたいメッセージを絞ることができる。
小説、新聞記事、ラブレター(もう死語かもしれない)・・・。形はさまざまでも、心に残る文章は伝えたいテーマが明確になっていて、メッセージは1つに絞られていることが多い。インタビュー記事でも同じように、もっとも伝えたいメッセージを中心に置いて、そこに枝葉の部分を肉付けしていく。メッセージがブレないようにするために、どんなストーリー構成にするかを大まかに決めておき、取材当日はその確認作業を行うつもりで臨む方がいい。
1-2. 質問がブレなくなる。
伝えたいメッセージが明確になっていると、インタビュー時に相手からどんなコメントを取りたいかが見えてくる。
よくある失敗パターンは途中で話がそれてしまい、メインテーマとは異なる話題で盛り上がってしまうこと。心地よく話してもらうために、取材相手を盛り上げることも大切なコツだが、大切なコメントを聞き出せないで時間終了となっては、本末転倒。その場でしか聞けない話はもちろん尊いものだが、一時的に脱線しても、聞きだすべき答えをしっかりもらっておくようにしよう。質問リストを作っておくのがおすすめだ。
1-3. 大切なコメントを引き出すためのヒントを用意できる。
理想型を描いていたとしても、取材相手はこちらの意図どおりにはなかなか答えてくれない。簡単には心を開いてくれなかったり、当時のことを忘れてしまっていたり、質問の意図を理解してくれないといった現実も待っている。
あなた: 「30回も失敗したのに、よくまだチャレンジしようと思われましたね?」
相手: 「そうなんだよね。今だったらもう諦めてるかもね(笑)」
あなた: 「何が背中を押してくれたんでしょう?」
相手: 「昔のことだからね、何だったっけ・・・」
あなた: 「・・・・@@;」
事前に下調べをしておけば、相手に意識させることなく、スムーズにエスコートすることもできる。
あなた: 「その頃にちょうど初めてのお子さんが産まれたとか」
取材相手:「あ、そうそう!子育てで疲れていた妻のひと言がいいヒントになった」
備えとコツがあれば憂いなし。インタビューの主導権を握るためには、事前準備が成功に導いてくれる。
「でも、実際に会ってみると、話がぜんぜん違っていたら・・・?」
まったく問題ない。たとえ計画どおりに進まなかったとしても、設計図があれば、何も準備しなかった場合よりずっと次の手が打ちやすくなるものだから。
インタビューのコツを、たった3分でつかむ方法、後半は
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コツその2 : 相手にたくさん話してもらうための雰囲気づくり
限られたインタビュー時間内に、いかに本質的な話を引き出せるか。
そのためには、取材相手との心の距離を少しでも縮めることが鍵となる。そのための3つのコツをご紹介しよう。
2-1. 場の空気を整える
質問に入る前に、余談をまじえて取材相手のコンディションを探り、気分をさり気なく盛り上げていく。
「いい話ができるだろうか・・・」
会社の代表としてメッセージを伝えなければいけない取材相手は、おおよそ緊張しているもの。インタビュアーの私たちも同様に大きな責務を負っているわけだから、お互いの緊張をシェアするがごとく、肩の力を抜けるような軽いトークから始めよう。
一番手っ取り早いコツは、何かひとつ褒めること。
「この眺め、最高ですね!」
「8月の花火大会のときは、特等席ですよ」
「いいですねぇ~、うちとはえらい違いだわ~」
「花火大会の時に、忙しくなければいいんですけどね(笑)」
自分のことや会社のことを褒められて嬉しくない人はいないだろう。
そんなツカミの会話の最中も、気を抜いてはいけない。
「この人は、嬉しいときにこういう相づちをうつのか・・・」とか
「話し出す前に少し沈黙があるタイプかな」など、取材相手の会話パターンをなんとなく掴んでおこう。
2-2. 同調して受けとめる
取材相手とさり気なく波長を合わせることで、会話はぐっとスムーズに流れはじめるものだ。こちらの心をピュアな状態にリセットして、すべての言葉を素直に聞ける準備をしよう。会話はよくキャッチボールに例えられるが、インタビューで大切なのは、球を受け取った時に大きな声でつど「ナイスボール!」と反応することだ。しっかりと目をみて大きくうなづく。私は、ちゃんとあなたの話を聞いています。考え方に賛同している、感動さえ感じている、という意思表示が必要だ。
心理学的に、人は「自分が受け入れられている」と感じると心を許しやすくなり、相手にも好感を持ちはじめる。要は、「この人なら、安心して話せる」と感じてもらえる雰囲気を作るのだ。
相手と波長を合わせるための、ちょっとしたコツをご紹介しよう(あまりやり過ぎるとウソっぽくなるので、あくまでもさり気なくが基本)。
- 笑顔で話を聞く
- 大きくうなづく
- 「なるほど」「そういうことなんですね」「よく分かりました」といった相づちを入れる
- 相手が話している時は、必ず視線をあわせる
- 相手の手の動きをときどき真似てみる(たとえば、机の上に手を置くとか、あごを触るなど)
- 自分の意見を主張しない
- 意外なこと、知らなかったことを聞いた際には、大きく目を見開いて驚く
2-3. 最大の敬意をはらう
インタビューを成功させるのに最も大切なポイントは、取材相手のことを好きになること。会話の時間を心から楽しむこと。いい話を聞きたいと思うなら、仕事という意識を越えて、絶対に何か学んで帰ろうという気持ちで臨むべきだ。こちらが目を輝かせて、「もっと聞かせて!」とばかりに質問を繰り出せば、インタビューを受ける相手も盛り上がる。
だから事前の下調べが必要なのだ。
相手はどのような経歴なのか、それはどのようなプロジェクトだったのか。
深く調べることは、相手に敬意をはらうことにもつながる。そして、そのなかできっと取材相手の良いところが見つかり、ファンになれる部分があるはずだ。きっとあなたは、インタビュー前日から、明日のことが気になって仕方なくなる。取材時には、やっと会えた憧れの人を見るような態度に、相手はすぐにでも心を開いてくれるはずだ。この時点で、もうほとんど結果は見えていると言ってもいいだろう。
植松 あおい
株式会社フレイバーズ専務取締役。セールスライティング担当。フラダンスに命かけてます。