コラム(WEB制作のポイント)
WEB制作のポイント 2015年4月15日
女性誌のキャッチコピーから学ぶ、心をつかむ5つの術
女性誌の表紙を飾るキャッチコピーほど面白いものはない。
あなたは、通勤電車や営業の移動中、暇つぶしに目で追った中吊り広告のキャッチコピーに、思わず吹き出してしまったことはないだろうか。
筆者は、女性誌の発売時期になると、電車の長い移動がとても心地よい。中吊り広告を端から端まで読み通し、震え上がるようなフレーズを見つけては、その奥深い名文句の意味を噛みしめられるからだ。
しかし、決してただ単に楽しめるだけではない。女性誌のキャッチコピーは、時代を反映し、女性たちがいま期待する雰囲気を反映したものであり、そこから彼女たちのニーズが見て取れるものだ。
この記事では、女性誌のキャッチコピーをパターン別に紹介しながら、女性が好む切り口を解説していく。
アナ雪効果か。そこに冷静さなど存在しない
今の自分の
ままで
モテたい
CanCam 3月号
「できる範囲でいいから、努力はしてくれ!」
CanCamの表紙を見た瞬間、心の中で叫んだのは男性だけではないはずだ。これも、「ありのままで」効果が色濃く影響したということか。
年齢がいくほど、「ありのままで」に反対する人が多いらしい。努力しろと。
ひょっとすると、CanCam読者層は若くして現代に疲れ果ててしまっていて、息切れ状態なのだろうか。
「いつか白馬の王子様願望」を反映したキャッチコピーは、どの雑誌でも目にする鉄板。アナ雪の影響という側面はあるものの、ある意味では「今のままで」も、昔から存在するシンデレラ的「突然幸せが降ってくるかも」願望に基づくものなのかもしれない。
ただ、もう一度だけ言ってもいいだろうか。
「努力はしろ」
失敗してもいいから、とにかく努力はしろ。その失敗をどこかで見ている、あなただけの白馬に乗った王子様は必ずいるから。
28歳、おしゃれも人生も
一生ヒロイン宣言!
SWEET 2月号
女性誌キャッチコピー、ぶっ飛びスタイルの第二弾。
誰がなんと言おうと、「一生ヒロイン」なのだ。
書店のレジで、恥ずかしいのでは?と思ってしまうのは、筆者がオッサンだからだろうか。
しかし、これも「いつか白馬に乗った王子様」願望を具現化した傑作だ。
平積みされている、もしくはコンビニの雑誌棚で、このキャッチコピーを目にした28歳は、ときめいてしまうに違いない。
いろんな場所で、あらゆるシーンで
幸せを
つかめる顔
美的 12月号
一方、メイクの情報誌である「美的」は、剛速球で訴求してきた。「幸せをつかめる顔」ときた。
心のどこかで、シンデレラを夢見ている女性にとっては、とにかくその顔になりたいのだから。とても分かりよいフレーズだ。
自分のプライドのために化粧をする人も多いと思うが、彼女たちはターゲットではない。
きれいにメイクアップすることで幸せをつかめるなら、そうなりたいと思う人がターゲットなのだ。
いつまでも
「夢見る女子」で
いよう!
STORY 2008年12月号
やはりそうだ。
女性はいつまでも「夢見る女子」でいたいのだ。創刊から6年経った2008年のSTORYも、明確なメッセージを発している。
現実的すぎていて冷めている女性よりも、いつまでも目をキラキラさせている人のほうが魅力的に見える。これは普遍的な事実。
ふだんの会話には、あり得ない言葉を繰り出す
この春こそマスターしませんか?
今日も素敵!を確約する
「美人グラデーション」
Precious(プレシャス) 3月号
注目すべきは、「確約」という言葉だ。
メーカーのカタログやWEBサイトで「確約」などと言おうものなら、「何を考えているんだ!」と担当者から大目玉を食らってしまうが、女性誌はそれができてしまうのである。
しかも、このような堅い言葉は彼女たちの日常会話にはまったく登場しないものだ。
しかしそれは、いざ女性誌のキャッチコピーに紛れ込むと、読者にとってこのうえなく魅力的に聞こえる、耳ざわりの良い言葉に激変する。女性誌には縁遠い、ビジネス用語的な堅い言葉をあえて使った編集者に花マルを差し上げたい。
おしゃれも防寒もゆずれない!
”あったか×こなれ”
新セオリー誕生!
oggi 2月号
このキャッチコピーで押さえたいのは、「セオリー」だ。
「○○のセオリー」は女性誌頻出単語のひとつ。しかしこれも、日常会話に登場はしない。
セオリーが何語などということは関係ない。スペルがどうだなどと野暮ったいことも抜きなのだ。
頻出していると、なんとなく文脈から意味は分かるのだから。
oggiの読者をバカにしているわけではない。
感覚的に理解できることは、非常に大切なことなのだ。
真冬の買い足し
総選挙
JJ 2月号
「総選挙」というキーワードを見たとたん、その手があったか!と地団太を踏んだのは筆者だけだろうか。
ここまでJJの読者と縁遠い言葉を使いながらも、感覚的に理解でき、イメージが膨らむキャッチコピーはない。完全に白旗状態、脱帽。筆者には到底書けそうもない。2015年に創刊40周年を迎える老舗ならではの、崇高な作品だ。
2月号発売の時期は、12月末ころ。
ちょうどクリスマスだし、年が明ければすぐにバーゲンが始まる。正月休みにゆったりしながらぱらぱらと誌面を眺めながら作戦を立てる読者の姿が目に浮かぶ。
”朝から元気”は
ママの最優先事項!
VERY 12月号
先に紹介したガチガチのキーワードよりは、若干ゆるめの表現だが、「最優先事項」は日常会話には登場しないし、頭のなかにも存在していない。
しかし、ママが元気にいることは家族にとって非常に喜ばしいことであり、元気なママがテキパキ行動する様子は「最優先事項」の持つニュアンスとしっかり結びつく。
こんなママに育てられた子供たちは、きっといい子になるのだろうなと想像させてくれる秀逸なキャッチコピーだ。
ほとんどオヤジギャグの世界でもOK
おしゃれの
「秋活」はじめよう!
with 10月号
「シューカツ」を「秋活」とは。
新刊発売時期はまだ暑さが残っているが、女性の目はもうすでにおしゃれの季節「秋」に向いている。サブキャッチには、「夏服にはもう、飽きました」とある。
ここでも「飽きた」と「秋」をかけているとしたら、編集者は相当なオヤジギャグ巧者のはずだ。
そこまで分析する読者もいないだろうが、実は女性誌にはオヤジギャグ的ダジャレが頻発する。
納得ずくで雑誌を手にする女性たちは、そこらのオヤジたちよりも腕が立つのかもしれない。