コラム(WEB制作のポイント)
WEB制作のポイント 2014年12月30日
ネットショップ運営に必要な3つの視点
「もう今月は買うつもりなかったのに、思わず買っちゃった!」
そんな経験をしたネットショップには、見れば見るほど「売れるノウハウ」が詰まっていることが多い。星の数ほどある通販サイトのなかで確実に売れているショップには、それだけの工夫と努力が積み重ねられている。
筆者がハマってしまったオンラインショップも含めて、運営の参考となるいくつかのテクニックをご紹介しよう。
その商品を購入すると、どんなベネフィットがあるのか?
ネットショップに商品とスペックを並べるだけで、物が売れると思っていないだろうか?顧客は、自分が抱える悩みや辛さが解消してくれるか、とても幸せな気分になれそうだと感じなければ、カートボタンなど押してくれないのだ。
たとえば、あなたがタオル専門オンラインショップの運営者だとしよう。
「オーガニックコットン100%、肌触りバツグンのバスタオル」。これでは単に商品のスペックを紹介しているに過ぎない。
それに比べて、
「オーガニックコットン100%のバスタオルだから、あなたの赤ちゃんがこのバスタオルにぷにゅぷにゅほっぺをくっつけたとたん、すっと表情が明るくなるのが分かるでしょう」
と紹介されていると、お母さんはその表情を見たいと思ってしまうだろう。
これが顧客にとってのベネフィット。
ポイントは、できるだけ具体的にターゲットを決めること。そうすれば、イメージがわきやすい。そして、人生がどれだけ素晴らしくなるかを鮮明に描いてもらえるコピーで商品を紹介しよう。
事例:その1 「ほぼ日ストア」
ご存知、糸井重里さんが運営している「ほぼ日ストア」のほぼ日手帳は、このネットショップの中で最もコンバージョンレイトが高い商品のはず。
筆者も2回ほど購入したが、上手く使いこなせずに挫折した組。それでも、ネットショップで見るたびに「やっぱり買おうかな」としつこく思ってしまうのはなぜなのだろうか?
たとえば、みんなの使い方コレクションでは、
「将来、成長した娘にプレゼントするための手帳」や「思わず読みふける映画手帳」といった、使い方アイデアが山盛りで紹介されている。1日1ページ分の手帳は、シンプルな余白に自由に書き込んだり貼り付けたりできる構成。1年分の思い出や、取り組みの成果を文庫本サイズに凝縮することで、使い終わった後にも、さらに価値が増幅するように感じられる演出が冴えわたっている。
事例:その2 ケーキハウス・ツマガリ
一般的に、ネットショップでの購入数を増やすにはページビュー数がKPI(Key Performance Indicator)と言われており、ショップ運営者はページビュー数を増やすことに日夜苦心している。しかしそうとばかりは言えない事例がこれだ。「お客さまの声」もかなり重要な数値なのではないだろうかと。
兵庫県西宮市にある洋菓子の名店、ケーキハウス・ツマガリのオンラインショップ。実は、ネットショップ運営のお手伝いをしているのは当社だが、ツマガリファンの情熱にはいつも驚かされるばかりなのだ。
商品紹介ページの下に設けられた「この商品を食べた感想をお書きください」というボックスに寄せられるご意見、ご要望の熱いこと。
「47年間生きてきて、一番おいしいクッキーでした」
「皆さんの感想が本当なのか購入したら、マロンパイのあまりの美味しさに感動しました!」
という声はまったく嘘偽りのないそのままのもの。
そして我々が気づいたのは、お客さまの声の数が購入率に関係しているということだ。ショップ運営者が語る商品紹介よりも、実際に購入したお客さまの声ほど説得力のあるコンテンツはないのである。
おもてなし精神を発揮する
リアルの店舗のように、お客さまのすぐそばにいるかのような接客がネットショップの大きな課題だ。サイトの運営者は訪問者の心の動きを予測し、必要とされる情報をタイムリーに提供することが成功の鍵となる。
ネットショップでは、さり気なく欲しい情報をお客さまに差し出す。逆に、差し迫って必要のない情報は、邪魔にならないように掲示する。実店舗に迫るおもてなし精神は、必ず訪問者に伝わるものだ。
事例:その3 ディノス・オンラインshop
たとえば、リンクボタンだけにフォーカスして、さまざまなネットショップを眺めるのもいいだろう。
使い勝手の悪いショップほど、リンクボタンやバナーが我先にと言わんばかりにガンガン主張しているものだ。
洋服や家具など幅広い商品を扱うネットショップ「ディノス」の商品詳細ページは、文字サイズや余白のバランスなど、細かな部分で使い勝手が考慮されている。
「カートに入れる」ボタンの次に目につくのは「お届け日/在庫確認」。リアルの家電量販店などで「今ご注文してもらったら、今日中に配達できますよ」と店員が背中を押すトークと同じようなものだ。
逆に、周辺情報である「お支払い方法」などは控えめ。目立たないけれど、すぐに見つかる位置に配置されている。
そういった細やかな配慮ができるかどうかは、ショップ運営の熱い思いはさておき、どこまで顧客目線に立てるか。そうすれば、情報の優先順位は自ずと見えてくるはずだ。
決して値段で勝負しない。
ここまでご紹介したとおり、結局のところ安いだけでは顧客は買ってくれない。あなたのネットショップにアクセスして、わざわざ送料を払ってまで注文しようと思わせるには「その店でわざわざ買う理由」が必要なのだ。
「私が知る限り、5本の指に入るほど美味しい」コーヒー豆。
このコーヒーショップの店長は、世界各地を旅しておいしいコーヒーを知り尽くしているという。その店長が、そこまで絶賛する豆をコーヒー好きのあなたはスルーできるだろうか?
「タイムマネージメントが上達する手帳」
世界一のコンサルティング会社が考案した、この手帳を時間管理に悩むあなたは、いくらでもいいから売ってくれと思わないだろうか?
ある分野を極めた専門家の言葉に、私たちは全幅の信頼を置く。さらにそこにストーリーが加わることで、値段や送料といった「ささいな」ハードルを難なくクリアさせてしまう「買う理由」が生まれるのだ。
事例:その4 土屋鞄製造所
興味をそそられるハウツーコンテンツは、幅広く訪問者を集める手段でもある。
上質なレザーアイテムを揃える土屋鞄製造所の「革のこと」は、革製品のケア方法を教えている。「雨の日対策」や「色移りのケア」など、カバンを買うつもりでなかった人も、ノウハウとともにネットショップの存在や商品を知ることになる。
また、職人魂が感じられるコンテンツ「工房よもやま」では、カバンの種類によってミシン針の太さが何種類も揃えられていることや、お役ご免になったランドセル持ち手の抜き型が食堂の扉に使われている話などが美しい写真と共に紹介されている。
革製品について専門性の高いネットショップ、情熱ある革職人がいる価値あるブランド。初めての訪問者にそんなイメージを印象づけられたら、顧客候補となり得るだろう。
事例:その5 ギフトショップCOCOMO
商品紹介ページを読むだけで、センスのよい理知的な店員さんの顔が思い浮かぶネットショップが「ギフトショップCOCOMO」。
ギフト商品に的を絞ったECサイトだが、商品説明がとても丁寧に書かれており、「きっとここの店員さんは誠実なのだろう」と思わせる。
ちなみに、筆者が購入したのはウサギのスタイ(よだれ前かけ)。ベビー服に消費者が求めることは、安全性と大人が喜ぶ可愛らしさである。
デザイン性に加えて、オーガニックコットンに早くから取り組んでいた店の製品であること、紡績から縫製まですべてが日本製であること。お洗濯の注意点も細かく紹介されている。
特にギフトとして購入する場合は、贈った商品が本人の価値を上げてくれる品であることが重要だ。商品のクオリティが親切丁寧に書かれていることで、顧客は安心して購入することができるのだ。
まとめ
こうやって、いくつかのネットショップを眺めて分かることは、どのショップも、徹底的にお客さま視点に立ち、お客さまの都合で物事を考えているということ。言葉にしてしまうと簡単に聞こえるが、それはなかなか簡単ではない。
では、いかにしてお客さま視点に立つことができるか。筆者がお薦めするのは、自分が積極的に顧客になってみること。自社商品はもちろん、気になるネットショップで実際に買い物をしてみる。話題のショップがあれば足を運んで、そのサービスを体感してみる。心地よいサービスや商品、逆に気に入らなかった店について分析しまくる。地道なしつこさが、あなたの消費者感覚を鋭くさせてくれるはずだ。
EC-CUBEで制作する、はじめてのネットショップ
サイト運用・管理サポート
WEB制作実績
植松 あおい
株式会社フレイバーズ専務取締役。セールスライティング担当。フラダンスに命かけてます。