インターナルブランディング
ブランド・アイデンティティを策定するプロセス、ブランデイング・プロジェクト推進方法、効果検証までの概略。ここでは、コーポレート・ブランディングのインターナル・ブランディングを例に説明しています。
※当社代表の平田弘幸は、ブランドマネージャー認定協会公認のインターナルブランディング・プラクティショナーです。
ブランド・アイデン
ティティの策定
1. 社内の各部門からメンバー選出
ブランドは、もともと企業に備わっているものであること、直接的にブランドを体現するのはラインスタッフであることから、経営層だけではなく、各部門からのメンバー参加を推奨しています。
各メンバーには、ブランド・アイデンティティ策定後の旗振り役としても活躍いただくことを求めていきます。
ラインスタッフの参加が理想ですが、経営層からのヒアリングで見込み客の特定までを当社で実施することも可能です。
2. 自社の分析
STP分析(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を中心としたフレームワークを用いて、社内の環境分析、外部環境分析をベースに、3C分析(自社、顧客、競合の関係性)、市場分析などを行います。
ブランディングの大きな目的は差異化ですので、まず優位性が保てる市場を特定するとともに、競合他社との関係性を自社固有の特長を鑑みながらポジションを確定していきます。
3. 見込み客の特定
顧客のペルソナ(実際のターゲットに近い架空の人物像)を設定し、ペルソナの感じ方、行動を推し量ることはマーケットを知るうえで非常にたいせつなことです。さらに、ブランドへの出合い方、関係の深まり方を予想することで、具体的な施策が見えてきます。
4. ブランド・アイデンティティの策定
顧客(候補)に認知されたいイメージを言葉で表したブランド・アイデンティティは、以降の施策の旗印になるものです。端的でわかりやすく、社内外の誰もが「そうだね」と納得できる言葉になっていることが必要です。
また、ブランド・アイデンティティは行動指針ではないので、解釈に余裕がない表現にまで固めてしまわないことがポイント。長く使い続ける過程で、違う方向から考えると、こういう意味もあると広がりの余地を残しておくほうが得策です。
必ずチェックしておくべきは、経営理念やミッション、パーパスといったブランド・アイデンティティの上位概念との整合性です。この点に相違があると、一貫性のある活動ができなくなってしまいます。
5. 浸透策検討、実施
まず社内に向け、策定したブランド・アイデンティティを成り立ちの理由もふまえ、理解しやすいストーリーに組み入れたブランドブックなどの説明ツールを作成、発表イベント(小規模な企業であれば、朝終礼の場でも構いません)を実施します。
その後、社内には浸透を図るための施策を立案し、実行に移していきます。社外には先に据えたペルソナの行動に基づき、コンタクトポイント(ブランドとの接点)にツールを配置する施策を実施します。
併せて、顧客以外のステークホルダーに対しても、ブランド・アイデンティティを反映したツールやサービスを波及させていきます。
6.効果検証、再実施
定期的に施策の効果検証、見直しを行っていきます。このプロセスを行うことが効果を高めるターニングポイントとなります。
インターナルブランディングに関するQ&A
Q:経営理念を社内に掲示していますが、浸透しているとはいえません。ブランディングも同じことになるのでは?
A:考え方と推進方法を工夫し、時間をかければ浸透は可能です
経営層とマネジメント層も含めた社員では、視座が違うことを理解しておく必要があります。経営層はリーダーですから、木の上に登り会社の行くべき方向を見定めています。しかし、マネジメント層を含めたラインスタッフは、日々の業務を顧客のためにこなしている。つまり、リーダーとは異なり、地面に近い視点で仕事をしています。
経営層から見れば、なぜその視点が持てないのかもどかしく感じることがあるかもしれませんが、全社員が木の上に登って遠くを見ている会社など存在しないし、そのような会社は顧客に対する責務を果たせない会社でしょう。
社内でブランド・アイデンティティを浸透させ、それに基づいた活動が行えるようにするには、ラインスタッフの業務にそれを組み込むしくみをつくればいいのです。
具体的には、日々の業務をブランド・アイデンティティに基づくと、どのようにあるべきかを現場で検討する機会を設け、実践するしくみづくりを地道に進めていくことで、理想を現実化させていくことができるようになります。
ただ、インターナルブランディングは一朝一夕で完成するものではなく、長い年月をかけて推進していくべきことであり、少しずつ歩みを進めていく覚悟と認知が必要です。
Q:浸透度調査とはどのようなものですか?
A:独自のメソッドで構築したツールを使用します
インターナルブランディングを始めるにあたり、効果測定と進捗確認をふまえて、社内調査を行われることをお勧めしています。
これには、一般社団法人ブランドマネージャー認定協会が開発した「ブランド・エンゲージメント診断」を用います。これは同協会のコンサルタントのみが利用できるツール(有料)で、全社員のブランドに対する体現度とエンゲージメントを調査することができます。
インターナルブランディング活動のスタート時とともに、定期的に浸透度を測ることで、社内活動の進捗度合いを数値でチェックすることができます。
Q:インターナルブランディング活動に反対意見が出たら?
A:インターナルブランディングを上手く進める要諦は、人の問題
インターナルブランディングは、社内を変革していこうとする活動です。そして、変革に必要なのはそこで働いている人の意識。いくらしくみを作っても、社員が変革をしようという意識にならなければ、なにも変わってはくれません。
そもそも、変化を嫌う人がほとんどだということ、全社員を同じレベルに保とうとはしないことを意識しておいてください。
協力的ではない人をどう巻き込んでいくかは、タイミングと社内調整が必要になってきます。正攻法でぶつかっても、納得してくれるかどうかはわからない。ただ、そういった方々も、変革の兆しが見え始め、社内が変わろうとし始めれば、心中穏やかではなくなってきます。
協力的でない人たちをどうやって巻き込んでいくか、いつがそのタイミングかをはかるのは、社内営業ともいうべき調整力にかかっています。